July 8, 2026 / General, Installation and testing, Best Practices 

公開日:2026年7月8日
カテゴリー:一般/施工・試験/ベストプラクティス


本記事は、Cabling Cert Techのパートナーである Fluke Networks の記事「NRZ vs. PAM4: How the signaling evolution impacts fiber connectivity, inspection, and testing」
を、Fluke Networks のご了解のもと、Cabling Cert Tech が原文に忠実に翻訳・監修したものです。なお、本記事では、Fluke Networksの翻訳記事と、Cabling Cert Techによる補足解説を明確に区別して掲載しています。


データセンターネットワークの伝送速度が800ギガビット、さらにはそれ以上へと高速化する中、NRZ(Non-Return-to-Zero:ノンリターン・トゥ・ゼロ)からPAM4(Pulse Amplitude Modulation with 4 Levels:4値パルス振幅変調)への進化は、光ファイバーインフラに求められる要件を大きく変えつつあります。本記事では、この信号方式の進化が現在のアプリケーションにおけるレーン数や光ファイバー本数にどのような影響を与えるのか、さらに、それがコネクタ端面検査や試験にどのような影響を及ぼすのかを解説します。

NRZとは?

すべてのEthernetリンクでは、両端に配置されたネットワークトランシーバーが信号の送受信を行います。これらのトランシーバーは、デジタルデータをネットワーク配線上で通信するために必要な電気信号または光信号へ変換するために、信号方式(シグナリング方式)を使用しています。

光ファイバーケーブル自体は、OS2シングルモードファイバーが2000年、OM4マルチモードファイバーが2009年に登場して以来、大きく変わっていません。一方で、信号方式は大きく進化しています。

デジタル通信の初期から使用されてきたNRZ(Non-Return-to-Zero:ノンリターン・トゥ・ゼロ)信号方式は、1980年代にEthernetの標準的な信号方式となりました。

NRZは、1と0をそれぞれ1つの信号レベルで表す、2つの信号レベルを用いた符号化方式を採用しています。同じ値のビットが連続する場合、信号レベルはそのまま維持され、中立状態またはゼロの状態に戻らないことから、「Non-Return-to-Zero(ノンリターン・トゥ・ゼロ)」と呼ばれています。

NRZは、シンプルでコスト効率に優れた符号化方式であり、信号遷移の回数が少ないため、消費電力を抑えられるという特長があります。時間の経過とともに、ボーレート(1秒間に発生する信号遷移の回数)は向上し、NRZ信号方式によるEthernetのレーン速度は、1 Gbpsから10 Gbps、そして現在では25 Gbpsまで高速化されています。

しかし、NRZは1レーンあたり25 Gbps付近が実用上の限界となります。より高速なレーン速度を実現するために必要な高いボーレートでは、信号がノイズやパルスの重なり(オーバーラップ)の影響を受けやすくなります。NRZは現在でも100 Gig未満のアプリケーションで広く使用されていますが、増大する帯域幅需要に対応するため、より高速なレーン速度を実現できる新しい符号化方式が求められるようになりました。

PAM4とは?

2015年頃に導入された4値パルス振幅変調(PAM4:Pulse Amplitude Modulation with 4 Levels)信号方式は、NRZのデータ伝送速度を2倍にしました。PAM4は、00、01、11、および10の2ビットをそれぞれ表す4つの信号レベルを使用します。これにより、PAM4信号方式は、同じボーレートにおいて、NRZの25 Gbpsに対し、50 GbpsのEthernetレーン速度を実現できるようになりました。

しかし、信号レベルの間隔が狭くなったことで、PAM4は反射によって生じるものを含め、ノイズの影響を受けやすくなりました。そのため、PAM4では、より複雑で消費電力の大きいトランシーバーが必要となり、前方誤り訂正(FEC:Forward Error Correction)が利用されています。FECは、データに冗長な情報を付加して符号化することで、伝送中に発生した誤りを検出・訂正する方式です。


NRZは、0と1を表す2つの信号レベルを使用する信号方式です。
一方、PAM4は、00、01、11、および10を表す4つの信号レベルを使用します。
これにより、1シンボル当たりに伝送できる情報量が2倍となり、データ伝送速度を大幅に向上させることができます。

なぜPAM4はNRZに代わるのか ― レーン当たりの伝送速度を2倍にする技術

PAM4によって実現された50 Gbpsのレーン速度は、業界における大きな節目となりました。これを受けて、2018年にはIEEE 802.3cd、2020年にはIEEE 802.3cmが承認され、以下に示す規格が策定されました。

  • 1レーンによる50 Gig Ethernet
  • 2レーンによる100 Gig Ethernet
  • 4レーンによる200 Gig Ethernet
  • 8レーンによる400 Gig Ethernet

デジタル信号処理(DSP:Digital Signal Processing)技術の進歩により、ノイズ、分散、その他の信号歪みを補正できるようになりました。これらの技術の進展により、PAM4のボーレートを2倍に高めることが可能となり、1レーンあたり100 Gbpsの伝送速度を実現しました。これが、2レーンによる200 Gig、4レーンによる400 Gig、さらに8レーンによる800 Gigを実現する基盤となりました。

現在では、DSP(デジタル信号処理)技術のさらなる進歩により、PAM4のボーレートをさらに2倍へ高め、1レーンあたり200 Gbpsのレーン速度を実現しています。現在策定が進められているIEEE P802.3djでは、この技術を活用して、4レーンによる800 Gigおよび8レーンによる1.6テラビットEthernetをサポートする予定です。

これは、10 GbpsのNRZベースのレーン速度で100 Gigを実現するために10レーンが必要だった初期の頃と比べると、大きな進歩です。さらに現在では、PAM4のボーレートを再び2倍に高め、1レーンあたり400 Gbpsのレーン速度を実現するための取り組みもすでに進められています。信号方式のレーン速度が向上するたびに、より少ないレーン数で、より高速なアプリケーション速度を実現できるようになります。

信号のレーン速度が向上すると、より少ないレーン数で、より高速なEthernet通信を実現できるようになります。

信号レーンが光ファイバー接続に与える影響

信号レーンは、波長(Wavelength)を利用して光ファイバー上でデータを伝送します。
パラレルオプティクス方式(Parallel Optics) は、複数の光ファイバーを並列に使用し、通常は1本の光ファイバーにつき1つの波長で同時にデータを伝送することで、高速通信を実現します。
一方、波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM) は、1本の光ファイバー上で複数の波長を同時に利用してデータを伝送することで、高速通信を実現する技術です。
このため、4レーン構成の400GbE は、パラレルオプティクス方式では8心のマルチモード光ファイバーで実現できます。一方、WDMでは2心のシングルモード光ファイバーで実現できます。

  • 4レーン構成の400GBASE-SR4では、マルチモード光ファイバーを使用するパラレルオプティクス方式により、100Gbpsの信号を4本の光ファイバーで送信し、4本の光ファイバーで受信します。これらの信号は、すべて850nmの波長を使用します。
  • 4レーン構成の400GBASE-FR4では、シングルモード光ファイバーを使用するWDM(波長分割多重)により、送信用に1本、受信用に1本の光ファイバーを使用します。それぞれの光ファイバーには、1271nm、1291nm、1311nm、および1331nmの各波長で100Gbpsの信号が4本同時に伝送されます。

※英語原文では「400GBASE-LF4」および第4波長「1441 nm」と記載されていますが、本記事ではIEEE 802.3の400GBASE-FR4仕様に基づき、「400GBASE-FR4」および「1331 nm」と表記しています。

レーン速度、レーン数、および光ファイバー本数は、光ファイバーアプリケーションにおける接続方式を決定する要素です。パラレルオプティクス方式のアプリケーションでは、MPO/MTP、MMC、またはSN-MTコネクタなどの多心コネクタが必要になります。一般的に、4レーンのアプリケーションでは8心コネクタが使用され、8レーンのアプリケーションでは16心コネクタが使用されます。

これに対して、WDMアプリケーションでは、1対の光ファイバーで複数の波長を使用するため、通常はデュプレックスコネクタが使用されます。

また、パラレルオプティクス方式とWDM技術を組み合わせることで、必要な光ファイバー本数を削減することも可能です。例えば、2020年に標準化された8レーンの400GBASE-SR4.2マルチモードアプリケーションでは、各光ファイバーで2つのWDM波長(850 nmおよび910 nm)を使用し、50 Gbpsのレーン速度を実現しています。この方式により、データセンターでは、16心接続へアップグレードすることなく、既存の8心接続を利用したまま100 Gigから400 Gigへアップグレードすることが可能になります。

コネクタ端面検査とクリーニングに関する考慮事項

PAM4はより高速な通信を可能にする一方で、信号マージンを小さくするため、光ファイバーの清浄度やコネクタ品質が通信性能にとって非常に重要になります。コネクタを検査する際は、コネクタの種類および端面に適合したチップを備えた検査ツールを使用することが重要です。

  • デュプレックスコネクタには、LC、SC、ST、およびFCコネクタがあります。また、MDC、CS、およびSNを含む、超小型フォームファクタ(VSFF:Very Small Form Factor)のデュプレックスコネクタもあります。これらの新しい小型コネクタは、超高密度環境において省スペース化に貢献します。
  • MPOコネクタには、従来型(8心、12心、24心、16心、または32心)のものに加え、新しいVSFF多心コネクタもあります。その代表例として、採用が進んでいるUS ConecのMMC(12心、16心、および24心仕様)や、SenkoのSN-MT(16心仕様)があります。

光ファイバーコネクタの端面には、Ultra Physical Contact(UPC)端面と、Angled Physical Contact(APC)端面の2種類があります。

  • UPC端面は平坦ですが、APC端面は8度の角度を持ち、光ファイバーコア内で発生する反射を低減します。
  • シングルモードのデュプレックスコネクタにはAPCまたはUPCを使用できますが、マルチモードのデュプレックスコネクタは通常UPCです。シングルフェルールのデュプレックスコネクタは、多心コネクタよりも優れた研磨品質を実現できるため、多心シングルモードコネクタで必要となるAPC端面を使用しなくても、良好な反射特性が得られます。
  • シングルモードMPOコネクタはAPC端面を使用しますが、マルチモードMPOコネクタではAPCまたはUPCのいずれも使用できます。
  • APC端面を採用したマルチモードMPOコネクタは、高速な400 Gigおよび800 Gigアプリケーションで普及が進んでいます。これは、100 Gbpsおよび200 Gbpsのレーン速度では、PAM4が反射の影響をさらに受けやすくなるためです。

効率的な検査を行うために、Fluke NetworksのFI-7000 FiberInspector™ Proは、あらゆるAPCおよびUPCデュプレックスコネクタを検査でき、IEC 61300-3-35の清浄度基準に基づく自動PASS/FAIL判定を提供します。また、Fluke NetworksのFI-3000 FiberInspector™ Ultra Cameraは、シングルファイバーおよびマルチファイバーUPCコネクタ、ならびにAPC多心コネクタに対して自動PASS/FAIL判定による検査を提供し、12心、16心、24心、32心のMPOコネクタやVSFF MMCにも対応しています。

検査の結果、コネクタのクリーニングが必要な場合には、Fluke NetworksのQuick Clean™クリーナーが利用できます。Quick Clean™クリーナーは、VSFFデュプレックスMDCや多心MMCを含む、幅広いデュプレックスコネクタおよび多心コネクタに対応しています。従来のスワブクリーナーが使用者のクリーニング技術に左右されるのに対し、使いやすいQuick Clean™クリーナーは、押し込むだけの簡単な操作とクリック音により、毎回一貫したクリーニングを実現します。

光ファイバーリンクの認証試験におけるベストプラクティス

光ファイバーリンクが設計仕様で定められたリンク長、損失バジェット、および極性(ポラリティ)の要件を満たしていることを認証試験によって確認するには、対象となるアプリケーションと接続方式について理解しておく必要があります。

最も正確な測定を行うためには、認証試験器の本体入力コネクタおよびテスト基準コード(TRC:Test Reference Cord)が、試験対象リンクと適合している必要があります。これにより、測定の不確かさが最も小さい1ジャンパー基準法を使用できます。適合していない場合は、試験対象配線の両側にハイブリッドTRCを使用する、測定精度の低い3ジャンパー基準法が必要になる場合があります。

デュプレックスリンク向けには、Fluke NetworksのCertiFiber® Pro光損失測定試験セットが用意されており、さまざまなアダプターおよびTRCを使用して、LC、SC、ST、FCのデュプレックスAPC/UPCコネクタや、新しいMDC VSFFコネクタを、1ジャンパー基準法で試験できます。

多心リンク向けには、Fluke NetworksのCertiFiber™ Max 光損失試験セットが用意されており、さまざまなアダプターおよびTRCを使用して、ピン付きおよびピンなしのMPO-12、MPO-16、MPO-24接続や、16心および24心のMMCを、1ジャンパー基準法で試験できます。

また、MultiFiber™ Pro MPOテスターは、本体にMPOコネクタを搭載しており、さまざまなアダプターおよびTRCを使用して、異なる心数やAPC/UPC端面を、1ジャンパー基準法で試験できます。

フルーク・ネットワークスのCertiFiber® Pro 光損失測定試験セットは、新しいMDC VSFFコネクタを含む各種アダプターおよびTRCに対応し、1ジャンパー基準法による測定を実現します。

WDMアプリケーションを試験する際は、波長範囲全体を評価するために、最も短い波長と最も長い波長の両方で試験を行うことが重要です。短い波長はアライメント不良(損失イベント)の影響を受けやすく、長い波長は光ファイバーの曲げや亀裂による影響を受けやすくなります。両方の波長における損失値を比較することで、長い波長の方が損失値が大きい場合は、光ファイバーの曲げや亀裂が発生している可能性を判断できます。

シングルモードWDMアプリケーションでは、通常、CertiFiber® Proを使用して1310 nmおよび1550 nmの波長で試験を行えば十分です。また、CertiFiber® Proは、これらのより長い波長を使用するシングルモードのパッシブ光ネットワーク向けに、1490 nmおよび1625 nmの波長での試験にも対応しています。

850~950 nm帯を使用するマルチモードWDMアプリケーションでは、CertiFiber® ProまたはMultiFiber™ Proを使用し、850 nmおよび1300 nmで適切なエンサークルドフラックス(EF:Encircled Flux)条件による測定を行うことで、対象となる波長帯を包括的に評価できます。

Cabling Cert Techによる解説

ここからは、Fluke Networksの記事で解説された内容について、日本の施工・試験現場やAIデータセンターでの活用を踏まえ、Cabling Cert Techの視点から補足します。


1.PAM4が高速Ethernetで重要となる理由

PAM4(Pulse Amplitude Modulation with 4 Levels)は、従来のNRZに代わる高速Ethernet向けの信号方式として採用が進んでいます。

NRZが1シンボル当たり1ビットを伝送するのに対し、PAM4は4段階の信号レベルを使用することで、1シンボル当たり2ビットの情報を伝送できます。そのため、同じボーレートで約2倍のデータ伝送速度を実現でき、800G Ethernetや1.6T Ethernetなど、AIデータセンターを支える超高速ネットワークの基盤技術となっています。

一方で、信号レベルの間隔が狭くなるため、反射やノイズなどの影響を受けやすくなり、光コネクタ品質や測定精度には従来以上に高い品質管理が求められます。


2.レーン速度の向上が光配線を変える

PAM4によってレーン当たりの伝送速度が向上すると、必要となるレーン数や光ファイバー本数も大きく変化します。

レーン速度400G Ethernetの構成例
50Gbps/レーン8レーン
100Gbps/レーン4レーン
200Gbps/レーン2レーン

このようにレーン速度が向上することで、

  • 必要な光ファイバー本数を削減できる
  • MPOコネクタ構成が変化する
  • 配線密度を高められる
  • 消費電力や実装スペースの削減につながる

など、データセンター設計そのものにも大きな影響を与えています。


3.DSP(Digital Signal Processing)が果たす役割

PAM4による高速伝送を実現するうえで欠かせない技術が、DSP(Digital Signal Processing:デジタル信号処理)です。

伝送速度が100Gbps/レーン以上になると、

  • ノイズ
  • 分散
  • 波形歪み
  • ジッタ

などの影響が大きくなります。

DSPは、これらの信号劣化をリアルタイムで補正することで、高速かつ安定した通信を可能にしています。

現在の400G Ethernetや800G Ethernetでは、PAM4とDSPは切り離せない関係にあり、高速Ethernetを支える中核技術となっています。

最近の動向:DSPの消費電力低減への取り組み

一方で、AIデータセンターでは、DSP自体が高速光トランシーバーの消費電力や発熱の一因となることも課題として認識されています。

そのため近年では、DSPを用いない、あるいはDSPへの依存をできるだけ減らした光インターコネクト技術の研究・製品開発も進められています。

このようにDSPへの依存を減らす技術が普及するほど、伝送路そのものの品質がこれまで以上に重要になります。光ファイバー配線やコネクタの損失・反射・汚れを最小限に抑えることが、高速かつ低消費電力な光通信システムを実現するための重要な条件となります。

DSPレス光インターコネクトの考え方は、今後のAIデータセンターを理解するうえで重要な技術テーマの一つです。詳しくは、以下の記事で解説しています。

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4.高速化とともに重要性が増すInspectionとTesting

Fluke Networksの記事で最も重要なメッセージは、

「レーン速度の向上により高速化・高密度化が進む一方で、光コネクタ品質や試験品質の重要性はこれまで以上に高まっている」

という点です。

PAM4は伝送効率を大幅に向上させましたが、その反面、反射や汚れ、損失に対する許容度は小さくなっています。

そのため、

  • コネクタ端面検査(Inspection)
  • 光コネクタのクリーニング
  • 光損失試験(Testing)
  • 適切な基準値設定(1ジャンパー基準法)

といった基本作業が、高速Ethernetでは従来以上に重要になります。

AIデータセンター時代では、伝送速度だけでなく、それを支える施工品質・検査・試験品質がネットワーク全体の性能を左右する時代になっています。本記事は、その技術的な背景を理解するうえで非常に参考となる内容と言えるでしょう。

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