本ブログ記事は、Cabling Cert Techのパートナーであるパンドウイット日本支社の監修のもと、提供いただいたセミナー資料や技術資料を参考に、Cabling Cert Techが独自に作成しました。製品に関する詳細は、パンドウイット日本支社の公式お問い合わせ窓口へお問い合わせください。
1章:あと少し長さが足りない―現場で繰り返されるケーブル長の悩み
監視カメラやWi-Fiアクセスポイント、IoTセンサーを設計・施工する際、「あと20m足りない…」という経験をされたことはありませんか?
LAN配線では、TIAおよびISO/IECの構内配線規格において、標準的なチャネル長は最大100mとされています。
また、1000BASE-TなどのEthernetアプリケーションも、この標準的な100mチャネルを前提として設計されています。
そのため、広い倉庫やキャンパス、スマートビルなどでは、機器の設置場所によって100mを超える配線が必要となり、中継機器の追加や光ファイバーへの切り替えを検討するケースがあります。
設計者やSIerにとって「100mの壁」は、配線設計上の制約の一つでした。
注記: 本記事で紹介するTX6™ ER(Extended Reach)ケーブルは、パンドウイット日本支社より日本市場での販売開始が案内されています。なお、最大チャネル長は配線構成や周囲温度などの条件によって異なります。詳細は本記事後半で解説します。
2章:市場背景と一般的な解決アプローチ
「100mの壁」は、監視カメラやWi-Fiアクセスポイント、IoTセンサーなどの長距離配線需要が高まる中で、設計・施工現場における代表的な課題の一つとなっています。
この課題に対し、これまでは主に次の2つのアプローチが採用されてきました。
- Extender方式:PoEエクステンダーや中継機器を追加し、Ethernet信号やPoE電力を延伸する方式。
- ハイブリッド方式:光ファイバーで通信を行い、メタル線でPoE給電を行う複合ケーブルを利用する方式。
いずれも広く採用されている有効なアプローチですが、用途によっては中継機器の追加や専用ケーブルの採用が必要となり、導入コストや施工・保守面での検討が必要になります。
こうした背景の中で、Panduitは中継機器を追加するのではなく、ケーブル自体の伝送性能を高めるという新しいアプローチとして、TX6™ ER(Extended Reach)ケーブルを提案しています。
3章:PanduitのExtended Reachケーブル
こうした課題に対し、Panduitはケーブル自体の伝送性能を高めるというアプローチを提案しています。
それが TX6™ ER(Extended Reach) Cat6 U/UTP 22AWGツイストペアケーブル です。
技術的特徴を4つの観点から確認
Extended Reachケーブルの強みを理解するために、Panduitが示した検証データを4つの観点から確認していきます。
3.1. 22AWG導体による低抵抗化
標準的なCat6ケーブル(AWG23/24)に比べ、22AWGの太径導体を採用。
AWG24と比較して約40%低い導体抵抗により、PoE++給電時の電力損失を大幅に抑えます。
これにより、電圧降下や発熱のリスクを低減できます。

3.2. 150mチャネルでの挿入損失確認
低抵抗化の結果として、22AWGケーブル140mと24AWG Cat6パッチコード10mを組み合わせた150mチャネル構成において、挿入損失(IL)が要求値を満たすことが確認されています。
これは、100mを超えるチャネル構成においても、適切なチャネル構成条件のもとで、挿入損失(IL)が要求値を満たすことを示しています。

補足:最大チャネル長は配線構成・温度条件で変わる
TX6™ ER(Extended Reach)ケーブルで適用できる最大チャネル長は、すべての構成で一律150mというわけではありません。Panduitの「テスト手順」に掲載されている「TX6™ Extended Reach チャネルガイダンス」では、アプリケーション、チャネル構成、周囲温度によって最大チャネル長が異なることが示されています。
100Mbps/1GbpsおよびPoE IEEE 802.3bt(90W)の場合、環境温度20℃では、プラグ to プラグ構成で最大150m、2~4コネクタ構成では最大140mです。また60℃では、それぞれ最大120m、最大110mに短くなります。
さらに10Mbpsでは、20℃のプラグ to プラグ構成で最大240m、2~4コネクタ構成で最大230mとされています。
このため、Extended Reachを設計する際は「150m」という最大値だけで判断せず、使用するアプリケーション、コネクタ数、パッチコード構成、周囲温度を含めて最大チャネル長を確認することが重要です。
詳細は、文末の関連資料「テスト手順」に掲載されている「TX6™ Extended Reach チャネルガイダンス」をご確認ください。
3.3. その他の伝送性能パラメータの検証
さらに詳細測定では、NEXT、PSACRF、RLといった重要な伝送性能パラメータも150mで要件を満たすことが示されています。
これにより、単なる「距離延長」ではなく、信号品質についても規格要求を満たすレベルであることが確認されています。



3.4. PoE++(IEEE 802.3bt準拠)対応
Extended Reachケーブルは、最大90Wを供給可能なPoE++に準拠しており、DC抵抗・抵抗アンバランス・ペア間抵抗アンバランスの各要件も満たしていることが検証されています。
さらにLP(Limited Power)認証を取得しており、ケーブルを束ねて敷設する場合でも発熱リスクを考慮した運用に対応しています。



4章:Extended Reachが有効なユースケース
Extended Reachケーブルは、100mを超える配線が課題となる現場や、高出力PoE機器を遠距離に設置する現場で有効なソリューションです。代表的なユースケースを紹介します。
- 倉庫・物流センター:天井の高い倉庫内で、監視カメラやIoTセンサーへPoE給電を行う長距離配線。
- 大学キャンパス・工場敷地:広い敷地内に設置されるWi-Fiアクセスポイント、監視カメラ、IoTセンサーへの長距離PoE配線。
- スマートビル・オフィス:PoE++対応機器を遠距離へ設置する場合でも、22AWG導体による低抵抗化が有効。
- 高速道路・道路インフラ:道路監視や交通信号の制御装置において、PoEによる長距離配線が有効。道路監視カメラ、交通信号制御設備、ITS関連設備など。
- 空港・港湾:広大な敷地での監視カメラやIoTセンサーの設置に対応。
- 大規模アリーナ・競技施設:サッカー場やバスケットボール競技場、コンサート会場などで、多数の監視カメラやWi-Fiを広範囲に設置する場合に有効。
実際の設計では、文末の関連資料「テスト手順」に掲載されている「TX6™ Extended Reach チャネルガイダンス」を参照してください。
5章:検証体制と今後の展望
Panduitは、Fluke NetworksおよびAEM(AEPジャパン株式会社)の認証試験機を活用した評価・検証にも取り組み、Extended Reachケーブルの評価体制を整えています。
6章:長距離配線アプローチの整理
「PoEによる長距離配線」という課題に対し、業界では複数のアプローチが提案されています。その一つが、PanduitのTX6™ Extended Reachケーブルによる長距離配線ソリューションです。
いずれの方式にも長所と短所があり、「どの現場で、何を最優先するか」によって最適な選択肢は変わります。たとえば、数百メートルを超える超長距離が必要であればファイバー併用のハイブリッド方式が有効ですが、中継器の設置や保守負担を避けたい場合には、ケーブル単体で延長可能なソリューションが適しています。
最終的な設計判断は、PoEの性能要件(Type/Class)を考慮することが不可欠です。以下に、長距離配線における主要な三つのアプローチを、技術的特徴と現場での留意点から比較表として整理しました。
| アプローチ | 主な技術 | 特徴・留意点 |
|---|---|---|
| Extender方式 | PoEエクステンダー+Cat5e/Cat6(AWG23/24) | 標準規格を順守しつつ延長。中継器設置によるコスト増・保守負担あり。 |
| ハイブリッド方式 | 光ファイバー+電源線の複合ケーブル | 数百m超の長距離に対応可能。ただし施工が特殊でコスト高。 |
| 太径ケーブル延長(Panduit Extended Reach) | Cat6(22AWG)Extended Reachケーブル | ケーブル単体で150m動作を確認(メーカー指定条件に基づく150mチャネルの検証データを公開)。PoE++・LP認証対応。 |

重要なのは、「150m」という数値だけではなく、使用するアプリケーション、チャネル構成、周囲温度などの条件を踏まえて最適な配線方式を選択することです。Panduit Extended Reachケーブルは、そのための新しい選択肢の一つとして位置付けられます。
7章:まとめ
ここまでの検証を踏まえて、Panduit Extended Reachケーブルの特長を整理します。
Extended Reachケーブルが提供する価値を整理すると、従来の延長方式と比べて以下の3点が特に重要です。
- 中継器不要のシンプル設計
PoEエクステンダーやメディアコンバータなどの中継器を必要とせず、メーカー指定のチャネル構成では、最大150mチャネルでの動作が確認されています
設計・施工・保守の簡素化により、故障リスクを低減し、システムの安定性を高めます。 - 技術的な信頼性
この150mでの動作は標準チャネル長(100m)を超える領域ですが、Panduitは自社ラボでの検証データを公開しています。
PoE++(IEEE 802.3bt)に準拠し、さらにLP認証を取得しているため、発熱や電圧降下のリスクを適切に管理し、長距離・高電力給電の設計に対応しています。 - 導入効果
中継器を不要にすることで設備を削減し、施工スペースを節約できます。
結果的に、設計者やSIerは新しい設計自由度を享受し、TCO(Total Cost of Ownership)の削減にもつながります。
なお、150mはすべての配線条件で適用できる値ではありません。最大チャネル長は、アプリケーション、チャネル構成、周囲温度などによって異なります。

Extended Reachケーブルは、100mを超える配線という新たな選択肢を提供しますが、その性能を最大限に活かすためには、チャネル構成や使用環境を考慮した適切な設計が重要です。設計時には、メーカーが提供するチャネルガイダンスや評価データを確認し、用途に応じた最適な配線方式を選択してください。
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