
2026年3月に開催された「JEITA 情報配線システム国際標準化カンファレンス 2026」では、JECTEC(一般社団法人 電線総合技術センター)のCat6A配線システムの品質保証に関する最新動向が紹介されました。
本カンファレンスは、Cabling Cert Techのパートナーである一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)情報・産業システム部会情報配線システム標準化専門委員会が主催するもので、情報配線システムに関する標準化活動や品質保証制度の最新情報が共有されています。
2026年現在、Cat6A配線の品質保証は新しい段階へ入りつつあります。従来は製品単体の性能確認が中心でしたが、現在は第三者評価による品質保証や、実際の配線チャネル全体を対象とした評価制度の検討が進められています。本記事では、JECTEC Cat.6A LANケーブル型式試験の概要と2026年の最新動向を解説します。
※JECTEC(一般社団法人 電線総合技術センター)は、日本の電線・ケーブル分野における第三者試験機関です。
第1章 なぜ今Cat6Aの品質保証が重要なのか
1-1 Cat6Aは特別な配線ではなくなった
かつてCat6Aは、データセンターや大規模ネットワークなど限られた用途で採用される高性能ケーブルという位置付けでした。
しかし現在では状況が大きく変わっています。
近年は、
- Wi-Fi6E
- Wi-Fi7
- マルチギガビットEthernet
- PoE対応機器
などの普及により、ネットワークインフラに求められる性能が急速に高まっています。
その結果、Cat6Aは一部の先進的な環境だけでなく、オフィス、学校、病院、工場など幅広い施設で採用されるようになりました。
JEITA資料によれば、国内LANケーブル市場におけるCat6Aの比率は年々増加しており、Cat6Aはもはや特殊な選択肢ではなく、将来を見据えた標準的な配線基盤の一つになりつつあるのです。
図1は、Cat6A品質保証の考え方がどのように進化してきたかを整理したものです。

1-2 無線LANが高速化するほど有線LANも重要になる
「Wi-Fiの時代なのだから、有線LANの重要性は下がっているのではないか」
そう考える人もいるかもしれません。
しかし実際には逆の現象が起きています。
Wi-Fi6EやWi-Fi7によって無線通信の速度が向上すると、アクセスポイントとスイッチを接続する有線LAN側にも高い性能が求められるようになります。
例えば、Wi-Fi7対応アクセスポイントでは、
- 2.5GBASE-T
- 5GBASE-T
- 10GBASE-T
などの高速有線接続を前提とする機種も増えています。
つまり、無線LANの性能を十分に活用するためには、その土台となる有線LAN配線の品質がこれまで以上に重要になるのです。
図2は、Cat6Aの採用が拡大した背景として、Wi-Fi規格の進化と有線LANへの要求性能の高まりを示したものです。

(JEITA国際標準化カンファレンス資料より)
Wi-Fi 6EやWi-Fi 7の普及によりCat6Aの採用が拡大する一方で、すべてのCat6A表示製品が同等の品質を有しているとは限りません。施工後の認証試験に確実に合格できる品質を確保することが、これまで以上に重要になっています。

このような背景から、Cat6Aケーブルの品質を第三者機関が評価する仕組みとして、JECTEC Cat6A型式適合試験が活用されています。

(JEITA国際標準化カンファレンス資料より)
JECTECの型式適合試験では、主にエイリアンクロストーク試験とパッチコード試験が実施されます。
特にCat6Aでは、隣接するケーブルから受けるノイズの影響(エイリアンクロストーク)が重要な評価項目となります。
JECTEC型式適合試験の中でも、Cat6A特有の重要な評価項目がエイリアンクロストーク試験です。
エイリアンクロストークとは、隣接するケーブルやコネクタから発生する外来ノイズであり、高速通信になるほど通信品質への影響が大きくなります。
図5は、エイリアンクロストークが発生する代表的な箇所を示したものです。

(JEITA国際標準化カンファレンス資料より)
エイリアンクロストークは、単一のケーブルだけでは評価できません。
実際の施工環境では複数のケーブルが束ねられて配線されるため、周囲のケーブルから受ける外来ノイズを考慮した評価が必要です。
JECTECでは「6-around-1法」と呼ばれる試験構成を用いて、中心ケーブルに対する周囲6本のケーブルからの影響を評価しています。

(JEITA国際標準化カンファレンス資料より)
実際の立上検証では、同じCat6Aとして販売されているケーブルであっても、エイリアンクロストーク対策構造の有無によって認証試験結果に大きな差が生じることが確認されています。

(JEITA国際標準化カンファレンス資料より)
さらに、JECTECのエイリアンクロストーク試験は、一般的なネットワークアナライザによる測定よりも厳しい条件で評価が行われます。

(JEITA国際標準化カンファレンス資料より)
1-3 「Cat6A」と書かれているだけでは十分ではない
ここで重要になるのが品質保証という考え方です。
一般的に、LANケーブルを選定する際には、
「Cat5e」
「Cat6」
「Cat6A」
といったカテゴリー表記が一つの判断基準になります。
しかし、実際のネットワーク品質はカテゴリー名だけで決まるものではありません。
たとえ製品にCat6Aと表示されていても、
- 規格で要求される性能を十分に満たしているか
- 実際の施工環境で安定した通信品質を維持できるか
は別の問題です。
特にCat6Aでは、後述するエイリアンクロストーク性能が重要になります。
これらの性能は外観から判断できず、利用者自身が簡単に確認することもできません。
つまり、
「Cat6Aと書かれている」
ことと、
「Cat6Aとして期待される性能を持っている」
ことは必ずしも同じではないのです。
1-4 市場拡大とともに品質保証が課題になった
Cat6A市場の拡大は、情報配線業界にとって歓迎すべきことです。
一方で、市場が大きくなるほど多様な製品が流通するようになります。
その中には、十分な性能を備えた製品もあれば、利用者が期待する性能を満たしていない製品が含まれる可能性もあります。
高速通信が当たり前になった現在では、こうした性能差が実際のネットワーク品質へ直接影響するようになっています。
そのため、
- 設計者
- 施工会社
- 発注者
- 利用者
のいずれにとっても、
「どの製品を選ぶのか」
という問題が以前にも増して重要になっています。
1-5 品質保証の考え方が変わり始めている
これまでLANケーブルの選定では、
「規格に適合していること」
が重視されてきました。
しかし近年では、
「規格に適合していると誰が確認したのか」
という視点も重要になっています。
つまり、
製品仕様を見るだけではなく、
第三者によって性能が確認されているかどうかが品質保証の新しい判断基準になりつつあるのです。
この考え方は、日本国内で進められているJECTEC性能評価試験にもつながっています。
次章では、Cat6Aで特に重要となるエイリアンクロストークについて詳しく見ていきます。
第2章 Cat6A最大の課題 ― エイリアンクロストーク
2-1 Cat6Aで初めて本格的に問題となったノイズ
LANケーブルの性能を考えるとき、多くの人は通信速度や伝送距離に注目します。
しかし、10GBASE-Tに対応するCat6Aでは、それまで以上に重要になった性能があります。
それが「エイリアンクロストーク」です。
エイリアンクロストーク(Alien Crosstalk)とは、隣接する別のLANケーブルから受ける不要なノイズのことを指します。
ケーブル内部の対線間で発生する通常のクロストークとは異なり、外部のケーブルから飛び込んでくるノイズであることが特徴です。
このため、日本語では「外来漏話」と呼ばれることもあります。
2-2 なぜCat5eやCat6では大きな問題にならなかったのか
読者の中には、
「Cat5eやCat6でもケーブルを束ねて使っていたのに、なぜ今さら問題になるのか」
と思われる方もいるかもしれません。
その理由の一つは通信速度の向上にあります。
Cat5eは主に1GBASE-T、Cat6は主に1GBASE-Tから一部10GBASE-Tへの対応を想定して設計されています。
一方、Cat6Aは10GBASE-Tを100m伝送することを前提に規格化されました。
通信速度が向上すると、使用周波数帯域も大きく広がります。
その結果、これまで問題として顕在化しなかった外部ノイズの影響が無視できなくなったのです。
しかし、理由はそれだけではありません。
2-3 なぜ高速通信ではノイズに弱くなるのか
通信速度が向上すると、単に使用周波数が高くなるだけではありません。
高速通信では限られた伝送路でより多くの情報を伝えるため、受信側が判別する信号レベルの差が小さくなります。
言い換えれば、通信速度が上がるほど信号とノイズを区別する余裕(S/Nマージン)が小さくなります。
その結果、これまで問題にならなかった微小なノイズであっても通信品質へ影響を与える可能性があります。
Cat6Aで重視されるエイリアンクロストークは、その代表的な例です。
つまり、エイリアンクロストークはCat6Aになって突然発生した問題ではありません。
高速化によって通信品質に求められる条件が厳しくなり、これまで見過ごされていたノイズの影響が無視できなくなった結果として顕在化した課題なのです。
2-4 実際の配線環境で発生する
エイリアンクロストークの厄介な点は、1本のケーブルだけを見ていても分からないことです。
例えば、机の上に置かれた1本のケーブルを測定した場合には問題が見えないことがあります。
しかし実際の建物では、
- ラック内
- ケーブルトレイ内
- 天井裏
- フロア配線
などで多数のケーブルが束ねられて敷設されています。
特にオフィスや学校、データセンターでは数十本から数百本のケーブルが近接して配線されることも珍しくありません。
こうした環境では、隣接するケーブル同士が互いに影響を与え合い、通信品質を低下させる可能性があります。
つまり、エイリアンクロストークは机上の理論ではなく、実際の施工環境で発生する問題なのです。
2-5 Cat6Aではエイリアンクロストーク対策が規格要求となった
こうした背景から、Cat6Aではエイリアンクロストーク性能そのものが規格要求に組み込まれています。
その代表的な評価項目が、
- PSANEXT
- PSAACR-F
です。
利用者がこれらの測定項目を詳しく理解する必要はありません。
重要なのは、
「Cat6Aでは複数のケーブルが近接して敷設された環境でも安定して10GBASE-T通信を実現できること」
が求められているという点です。
つまり、Cat6Aでは単に導通しているだけでは不十分であり、実際の施工環境を想定した性能が必要になるのです。
2-6 品質は見た目だけでは判断できない
しかし、ここで新たな課題が生まれます。
エイリアンクロストーク性能は外観から判断できません。
また、製品カタログやパッケージに「Cat6A」と記載されていても、実際に要求される性能を十分に満たしているかどうかを利用者が判断することは容易ではありません。
さらに高速通信になるほど、性能のわずかな差が通信品質へ影響する可能性があります。
つまり、
「Cat6Aと書かれている」
ことと、
「Cat6Aとして十分な性能を持っている」
ことは必ずしも同じではないのです。
2-7 技術的課題から品質保証の課題へ
エイリアンクロストークは一見すると技術的な問題に見えます。
しかし実際には、
- 設計者
- 施工会社
- 発注者
- 利用者
が適切な製品を選定できるのかという品質保証の問題でもあります。
市場にはさまざまな製品が流通しており、その性能を利用者自身が確認することは容易ではありません。
特に近年は、性能要求の高まりに対して十分な品質を持たない製品が市場へ流通していることが業界内でも指摘されるようになりました。
その結果、
「Cat6Aと表示されていること」
ではなく、
「第三者機関によって性能が確認されていること」
の重要性が高まっています。
そこで重要になるのが第三者による客観的な性能評価です。
次章では、こうした市場背景の中で、なぜJEITAとJECTECが性能評価制度の整備に取り組むことになったのかを見ていきます。
第3章 なぜJECTEC性能評価試験が始まったのか
3-1 Cat6A市場の拡大と新たな課題
近年、企業ネットワークや教育機関、データセンターなどを中心にCat6A配線の採用が拡大しています。
その背景には、
- 10GBASE-Tへの対応
- Wi-Fi6EやWi-Fi7の普及
- マルチギガビットEthernetの利用拡大
- PoE給電機器の増加
などがあります。
Cat6Aはもはや一部の先進的なネットワークだけのものではなく、多くの施設で標準的な選択肢となりつつあります。
しかし、市場の拡大とともに新たな問題も見え始めました。
それは、
「Cat6Aと表示されていても、必ずしもCat6Aとして求められる性能を満たしているとは限らない」
という問題です。
特に10GBASE-T通信で重要となるエイリアンクロストーク性能については、外観や仕様書だけで判断することが難しく、ユーザーや施工会社が製品の実力を見極めることは容易ではありません。
3-2 市場には規格不適合製品も存在する
JEITAの検討資料では、Cat6A市場の拡大に伴い、規格要求への適合状況を利用者が判断しにくい製品も存在すると指摘されています。
Cat6Aでは、
- PSANEXT
- PSAACR-F
といったエイリアンクロストーク関連性能が重要になります。
しかし、これらの性能は一般的な導通確認や簡易試験では確認できません。
また、製品カタログだけでは実際の性能差が見えにくく、購入者や設計者が客観的に判断することも困難です。
その結果、
「Cat6Aと表示されているから安心」
という考え方だけでは、本来期待する通信品質を確保できない可能性があります。
この問題は、利用者だけでなく、設計者や施工会社にとっても大きなリスクとなります。
3-3 なぜ第三者評価が必要だったのか
従来、LANケーブル製品の品質評価は主にメーカー自身によって行われてきました。
もちろん、多くのメーカーは適切な試験設備を持ち、自社製品の品質管理を行っています。
しかし、市場全体の信頼性を高めるためには、
「メーカーが自ら評価する」
だけではなく、
「第三者が同じ基準で評価する」
仕組みが求められます。
これは自動車や電気製品の認証制度と同じ考え方です。
第三者評価の目的は、特定メーカーを優遇することではありません。
利用者や設計者が、客観的な基準に基づいて製品を選択できる環境を整えることにあります。
特にCat6Aのように高度な性能が求められる配線システムでは、この客観性が重要になります。
3-4 JEITAとJECTECによる取り組み
こうした背景から、JEITA(電子情報技術産業協会)はCat6A市場における品質保証の仕組みづくりを検討しました。
その評価機関として選ばれたのが、一般社団法人 電線総合技術センター(JECTEC)です。
JECTECは電線・ケーブル分野における試験・評価機関として長年の実績を持ち、第三者の立場から客観的な評価を実施できる組織です。
JEITAとJECTECは協力して、
- Cat6Aエイリアンクロストーク試験
- Cat6Aパッチコード試験
などの評価制度を整備し、市場へ提供を開始しました。
この制度の目的は、単に「合格」「不合格」を判定することではありません。
市場に流通する製品の品質を見える化し、設計者・施工会社・ユーザーが安心して製品を選択できる環境を整えることにあります。
3-5 JECTEC Cat.6A LANケーブル型式試験の意義
JECTEC性能評価試験は、単なる認証マーク制度ではありません。
本質的には、「Cat6A配線システムに求められる性能を第三者の立場で確認する仕組み」
と言えます。
これはメーカーの品質管理を否定するものではなく、市場全体の信頼性向上を目的とした取り組みです。
また、2026年現在では制度の対象も拡大しつつあり、従来のケーブル評価やパッチコード評価に加え、チャネル全体の品質評価へと発展しようとしています。
つまりJECTEC制度は、単なる製品評価制度ではなく、日本の情報配線業界における品質保証の基盤として進化を続けているのです。
次章では、JECTEC性能評価試験の具体的な試験方法と、その評価の考え方について見ていきます。
第4章 パッチコード試験の重要性
4-1 Cat6Aパッチコードの品質評価
ここまで見てきたように、JECTEC性能評価試験ではエイリアンクロストーク性能を通じて、Cat6Aケーブルの品質を第三者の立場から評価しています。
しかし、実際の通信経路を構成するのはケーブルだけではありません。
ネットワーク機器と配線システムを接続するパッチコードも、通信品質を左右する重要な構成要素です。
そのためJEITAでは、市場に流通しているCat6Aパッチコードについても性能評価を行っています。

(JEITA国際標準化カンファレンス資料より)
JEITAのパッチコード評価では、市場で販売されているCat6Aパッチコードの中にも、規格要求を満たさない製品が存在することが報告されています。
つまり、
「Cat6A」と表示されていることと、
「Cat6Aパッチコードとして必要な性能を満たしていること」
は必ずしも同じではありません。
4-2 パッチコード試験とは
パッチコード試験は、完成したパッチコード単体の性能を評価する試験です。
一般的なチャネル試験とは異なり、パッチコードアダプタを使用してコネクタ部分を含めた電気性能を測定します。
主な評価項目として、
・NEXT(近端漏話)
・RL(リターンロス)
などが確認されます。

(JEITA国際標準化カンファレンス資料より)
この試験によって、パッチコード単体が規格要求を満たしているかを客観的に確認できます。
4-3 パッチコード評価結果
JEITA資料では、実際に市場で販売されているCat6Aパッチコードを評価した結果が紹介されています。

(JEITA国際標準化カンファレンス資料より)
図11を見ると、
A社製品とC社製品は不適合、
B社製品のみ適合
という結果になっています。
同じCat6A表示製品であっても、実際の性能には大きな差が存在することが分かります。
特に導体構造やケーブル構成の違いが性能に影響していることが示されています。
4-4 適合製品との比較
一方で、十分な性能を満たしている製品も存在します。

(JEITA国際標準化カンファレンス資料より)
図11を見ると、
A社製品とC社製品は不適合、
B社製品のみ適合
という結果になっています。
同じCat6A表示製品であっても、実際の性能には大きな差が存在することが分かります。
特に導体構造やケーブル構成の違いが性能に影響していることが示されています。
4-5 現在のJECTEC性能評価制度
2024年9月より、JECTECではCat.6A LANケーブル性能評価試験の受付を開始しています。
評価対象は、
- Cat6Aケーブルのエイリアンクロストーク
- パッチコードのRL
- パッチコードのNEXT
です。

(JEITA国際標準化カンファレンス資料より)
JECTECの公開資料によれば、評価はJIS X 5150-1:2021への適合性を確認する形で実施されています。
また評価結果はJECTECのWebサイトで公開されており、ユーザーが製品選定時の参考情報として利用できます。

(JEITA国際標準化カンファレンス資料より)
4-6 試験結果を見るときの注意点
ここで一つ理解しておきたいことがあります。
JECTEC性能評価試験やJEITAによる評価結果は、品質保証にとって非常に有効な指標ですが、ネットワーク品質のすべてを保証するものではありません。
また、JECTECの公開資料でも、
「評価結果は依頼者から提供されたサンプルのみに有効であり、同一型式品の規格適合を保証するものではない」
と明記されています。
そのため、評価結果は製品選定の重要な参考情報として活用すべきものであり、絶対的な保証を意味するものではありません。
試験に適合している製品であっても、実際のネットワーク品質は、
・設計
・施工品質
・接続部品の選定
・現場での認証試験
などにも左右されます。
つまり、
「適合品だから安心」
ではなく、
「適合品を品質保証の出発点として活用する」
という考え方が重要です。
こうした背景のもと、JEITAおよびJECTECでは、実際の通信経路全体を対象とした新たな品質評価の検討が進められています。
第5章 2026年の新展開 ― チャネル品質保証への進化
2026年のJEITA国際標準化カンファレンスでは、従来のケーブル評価やパッチコード評価に加え、新たにチャネル全体を対象とした品質評価の検討が紹介されました。
本章では、その背景と意義について整理します。
5-1 チャネル品質保証という新しい考え方
これまでのJECTEC性能評価試験では、主にケーブル単体やパッチコード単体の性能評価が行われてきました。
しかし、実際のネットワークはケーブルだけで構成されているわけではありません。
現場では、
・LANケーブル
・パッチパネル
・モジュラージャック
・パッチコード
など複数の部材が組み合わされ、一つの通信経路を形成しています。
そのため、個々の部材が規格に適合していても、システム全体として期待した性能を発揮できるとは限りません。
2026年のJEITA資料では、この課題に対応する新たな取り組みとして、
「Cat6A/Cat6A エイリアンクロストーク(チャネルリンク)」
の検討が紹介されました。
これは、ケーブル単体ではなく、実際の通信経路全体を対象とした品質評価への発展を示す動きと言えるでしょう。

(出典:フルーク・ネットワークス「情報配線システムの試験要領書 ~作成の手引き~」)
図15に示すように、利用者が実際に使用している通信経路は、
・機器コード
・パッチパネル
・水平配線
・通信アウトレット
・ワークエリアコード
を含む「チャネル」です。
一方、これまでのエイリアンクロストーク評価で主な対象となっていたケーブルは、実際のチャネルを構成する要素の一部分に過ぎません。
つまり、
「性能評価に合格したケーブル」
と
「性能評価に合格したパッチコード」
を組み合わせたとしても、
必ずしもチャネル全体として十分な性能が確保されるとは限らないのです。
近年では、
・Wi-Fi 6E
・Wi-Fi 7
・マルチギガビット Ethernet
・高電力PoE
などの普及により、配線システムに求められる品質水準はますます高まっています。
そのため、部材単体ではなく、実際の利用環境に近い状態で評価する重要性が高まっています。
5-2 JEITAが示した2026年度の新たな取り組み
JEITAの2026年国際標準化カンファレンス資料では、2026年度の取り組みとして以下の3項目が紹介されました。
Cat6A/Cat6A エイリアンクロストーク(パーマネントリンク)
Cat6A/Cat6A パッチコード
Cat6A/Cat6A エイリアンクロストーク(チャネルリンク)
このうち、
「チャネルリンク評価」
が今回新たに追加された項目です。
資料では、
「今回実施」
との記載があり、2026年度に評価方法や制度化に向けた検討・検証が進められていることが示されています。
現時点では、ケーブル評価やパッチコード評価のような正式な評価制度として運用されているわけではありませんが、今後の展開として注目すべき取り組みと言えるでしょう。

(JEITA国際標準化カンファレンス資料より)
5-3 制度化に向けたロードマップ
JEITA資料では、チャネルリンク評価の実験結果を踏まえ、今後の方針についても示されています。

(JEITA国際標準化カンファレンス資料より)
資料では、
「今回実験を行ったチャネル構成の結果を基に試験条件等を精査し、チャネル構成のエイリアンクロストーク試験の認証制度を2026年度中には立ち上げる」
と明記されています。
つまり、
2026年時点ではまだ検証段階であるものの、
JEITAおよびJECTECはチャネルリンク評価を正式な認証制度として運用する方向で準備を進めていることが分かります。
これは、
ケーブル評価
パッチコード評価
に続く、
第三の品質評価制度が誕生する可能性を示しています。
5-4 Cabling Cert Techの見方
今回のJEITA資料が示しているのは、
「良いケーブルを選べば終わり」
という時代から、
「システム全体で品質を考える時代」
への移行です。
これからは、
・適切なケーブル選定
・適切なパッチコード選定
・適切な施工
・適切な認証試験
を組み合わせた総合的な品質保証が求められるようになります。
言い換えれば、品質保証の対象は
製品
↓
チャネル
↓
ネットワーク全体
へと広がり始めています。
JEITAおよびJECTECが2026年度中の制度立ち上げを目指しているチャネルリンク評価は、その変化を象徴する重要な取り組みと言えるでしょう。
次章では、実際にどのような製品が第三者評価を受けているのか、JECTEC公開情報をもとに見ていきます。
第6章 JECTEC適合品一覧から見える市場の現状
JECTECでは、性能評価試験に適合した製品情報を公開しています。
本章では、公開情報をもとに、どのようなメーカーや製品が第三者評価を受けているのかを見ていきます。
6-1 第三者評価を受けた製品はどのようなものか
JECTEC性能評価試験は、単に制度を整備することを目的としているわけではありません。
実際に市場へ流通している製品を評価し、その結果を公開することで、利用者が製品選定の参考にできる仕組みを提供しています。
2026年現在、エイリアンクロストーク試験およびパッチコード試験に適合した製品は、JECTECのホームページで公開されています。
適合品一覧を見ると、国内外の複数メーカーが第三者評価を受けていることが分かります。
これは利用者にとって、
「Cat6Aと表示されている」
だけではなく、
「第三者機関によって性能が確認されている」
製品を選択できる環境が整いつつあることを意味しています。
6-2 エイリアンクロストーク試験適合品
2026年6月時点で公開されているエイリアンクロストーク試験の適合品を見ると、2024年10月の試験開始以降、複数メーカーの製品が順次追加されていることが分かります。
主な適合企業は以下の通りです。(試験実施日順)
- 富士電線株式会社
- 日本製線株式会社
- 通信興業株式会社
- パンドウイットコーポレーション
- 岡野電線株式会社
- 関西通信電線株式会社
- 株式会社e431
適合品一覧には、
- 製品型番
- 導体サイズ(AWG23、AWG24、AWG26など)
- 試験長
- 試験実施日
が掲載されており、各製品の評価条件を確認することができます。
6-3 パッチコード試験適合品
パッチコード試験についても複数の企業が適合製品を公開しています。
主な適合企業は以下の通りです。
- 富士電線株式会社
- 通信興業株式会社
- パンドウイットコーポレーション
- 日本製線株式会社
- 岡野電線株式会社
第5章で紹介したように、実際の通信品質はケーブル単体だけでは決まりません。
そのため、パッチコードについても第三者評価を受けた製品を選択することが品質確保の一助となります。
6-4 適合品一覧から見えてくること
公開されている適合品一覧を見ると、AWG23、AWG24、AWG26など異なる導体サイズの製品が評価されていることが分かります。
また、試験長についても60m、65m、80m、90mなど複数の条件で評価が行われています。
例えば、
- AWG23クラスでは90m評価品が多い
- AWG24クラスでは80~90m評価品が見られる
- AWG26細径ケーブルでは60~65m評価品が多い
といった傾向が確認できます。
これらは単純な優劣を示しているわけではありません。
導体サイズやケーブル構造、想定用途によって設計条件は異なります。
そのため適合品一覧を見る際は、
- メーカー名
- 製品型番
だけではなく、
- 導体サイズ
- ケーブル構造
- 評価条件
- 試験長
にも注目すると、より深く製品の特徴を理解することができます。
6-5 適合品一覧はランキングではない
ここで誤解してはならないのは、JECTEC適合品一覧はメーカーや製品の優劣を示すランキングではないということです。
一覧に掲載されているのは、あくまでも所定の試験条件で性能評価を受けた製品です。
したがって、
- 製品構成
- 設計要件
- 施工条件
- 保守体制
- サポート体制
などは別途検討する必要があります。
重要なのは、
「第三者評価という客観的な判断材料を持った上で製品選定ができる」
という点です。
※本章で紹介している適合品情報は執筆時点のJECTEC公開情報に基づいています。掲載順は試験実施日順を参考に整理したものであり、企業や製品の優劣、市場シェアを示すものではありません。最新の適合品情報については、JECTEC公式サイトの適合品一覧をご確認ください。
6-6 Cabling Cert Techの見方
ここまで見てきたように、JECTEC適合品一覧は、メーカーや製品の優劣を示すランキングではありません。
重要なのは、
「Cat6Aと表示されている」
ことだけでなく、
「第三者機関によって性能が確認されている」
という客観的な判断材料を持てることです。
一方で、実際のネットワーク品質は、
・製品選定
・施工品質
・接続部品の組み合わせ
・現場認証試験
などによって左右されます。
つまり、第三者評価は品質保証の出発点であり、最終的な品質を保証するものではありません。
6-7 次章に向けて
ここまで見てきたように、第三者評価制度によって製品選定の判断材料は増えています。
しかし、ネットワーク品質は適合品を選ぶだけで保証されるものではありません。
次章では、Cabling Cert Techの視点から、
- 第三者評価
- 施工品質
- 現場認証試験
の関係について整理しながら、品質保証を実現するために何が必要なのかを考えていきます。
第7章 Cabling Cert Techの考察
ここまで見てきたように、JECTEC性能評価試験は製品選定における重要な判断材料となっています。
本章では、第三者評価と施工品質、そして現場認証試験の関係について考えてみます。
7-1 第三者評価と施工品質をどう両立するか
ここまで見てきたように、JECTEC性能評価試験はCat6A配線システムの品質保証において重要な役割を果たしています。
市場には多様な製品が流通しており、その性能を利用者自身が確認することは容易ではありません。
そのような中で、第三者機関による客観的な性能評価は、設計者や施工会社、発注者にとって有効な判断材料になります。
しかし、ここで誤解してはならないことがあります。
それは、
「第三者評価に適合した製品を選べば品質保証は完了する」
わけではないということです。
7-2 品質保証は三つの要素で成り立つ
Cabling Cert Techでは、ネットワーク品質保証を次の三つの要素で考えています。
第一層
第三者による製品評価
例えば、
- JECTEC性能評価試験
- 各種認証制度
などが該当します。
これは製品選定段階における品質保証です。
第二層
施工品質
適切な製品を選定しても、
- 過度な曲げ
- 過大な引張荷重
- 不適切な成端
- 不適切な束線
などがあれば、本来の性能を発揮できません。
実際のネットワーク品質は、施工品質に大きく左右されます。
特にCat6Aでは、エイリアンクロストーク対策を踏まえた施工技術者の技能や施工品質が、最終的な通信性能に大きく影響します。
第三層
現場認証試験
施工が完了した後には、
- Permanent Link試験
- Channel試験
などによって実際の伝送性能を確認する必要があります。
設計通りに施工されたつもりであっても、現場では予期しない問題が発生することがあります。
そのため、最終的な品質確認として認証試験は欠かせません。
7-3 適合品を選ぶことは品質保証の出発点
今回紹介したJECTEC性能評価試験は、非常に価値のある取り組みです。
特にCat6Aのようにエイリアンクロストーク性能が重要な配線システムでは、第三者による性能確認が大きな意味を持ちます。
しかし、適合品を選ぶこと自体がゴールではありません。
適合品は、
「品質保証の出発点」
と考えるべきでしょう。
適合品を採用し、
適切に施工し、
現場で認証試験を行う。
その積み重ねによって初めてネットワーク品質が保証されます。
7-4 チャネル評価の時代が始まろうとしている
第5章で紹介したように、JECTECではチャネル評価制度の検討が進められています。
これは非常に興味深い動きです。
従来の品質保証は、
「ケーブル」
あるいは
「パッチコード」
といった個別部材の性能確認が中心でした。
しかし実際に利用者が使用しているのは個々の部材ではありません。
ケーブル、コネクタ、パッチパネルなどで構成される配線システムにパッチコードを接続した「チャネル」です。
つまり利用者が使っているのは、
「製品」
ではなく
「チャネル」
なのです。
チャネル評価制度は、この現実により近い品質保証の考え方と言えるでしょう。
7-5 Cat6A品質保証の考え方は変わり始めている
かつては、
「Cat6Aと表示されていること」
が品質保証の一つの目安でした。
しかし現在は、
「第三者機関によって性能が確認されていること」
が重要視されるようになっています。
そして今後はさらに、
「実際のチャネルとして性能が確認されていること」
へと進化していく可能性があります。
これは日本の情報配線業界にとって大きな前進と言えるでしょう。
7-6 おわりに
Wi-Fi7時代を迎え、有線LAN配線にはこれまで以上に高い品質が求められています。
重要なのは、
「Cat6Aと書かれていること」
ではありません。
本当に重要なのは、
「実際に性能が確認されていること」
です。
第三者評価、
施工品質、
そして現場認証試験。
この三つを組み合わせて考えることが、これからのネットワーク品質保証においてますます重要になると私たちは考えています。

