📌本記事は、PoE延長設計を検討中の施工・設計担当者向けの内容です。
※ 本記事は、CommScope社のご協力を得て、日本市場におけるネットワーク構築の文脈を踏まえて整理した内容となっております。
PoEは「100mが限界」と思っていませんか?
屋外カメラの設置で、こんな経験はありませんか?
- 建物から離れた駐車場までLANが届かない
- 倉庫や工場で中継機が増え、構成が複雑になる
- PoE給電では電力が足りない
PoEは100mが設計上の基本とされています。
しかし現場では、
「あと少し届かない」
という場面に、何度も直面します。
もし、
最大250mまで延長できて、しかも90W PoE給電が可能だとしたら?
その課題を解決するのが、CommScopeのGigaREACH™ XLです。
GigaREACH XLとは何か?
GigaREACH XLは、
- 最大250mの長距離伝送
- 最大90W PoE給電
- 既存のLAN配線インフラを活用可能
という特長を持つ、長距離PoEソリューションです。
従来の「100mの壁」を超えることで、
- 4Kカメラ
- 高出力PoE対応機器
- スマートビル向けセンサー
などの設置自由度が大きく向上します。
本記事でわかること
この記事では、
- なぜ100mが限界とされているのか
- GigaREACH XLの仕組み
- 導入に適したシナリオ
- 実装時の注意点
を、現場目線で解説します。
目次
1. GigaREACH XL 長距離PoE が解決する「100mの壁」と現場の課題
商用ケーブリング規格では、カテゴリ 6 (Cat 6) または 6A イーサネットケーブルの最大サポート長は 100 メートルと定義されています。この制限は、信号がケーブルを伝播する際の挿入損失(信号損失)などの電気的特性に基づいています。業界はこのパラメータに基づき、信頼性を保証できる最大距離を 100 メートルとして標準化しました。
エッジデバイスの増加と工事の複雑化
今日のエンタープライズネットワークは、IT デバイスと OT デバイスの両方に接続と電力を供給する必要があります。エッジ対応 IoT デバイスの数は 2030 年までに 77 億個に達すると予想されていますが、これらのデバイスの一部は、最寄りの通信室(テレコムルーム)から 100 メートル以上離れた場所に設置されることが課題となっています。
既存の延長手段が抱えるコストとリスク
ネットワークを100m以上延長するための手段はいくつか存在しますが、いずれも導入コスト・施工負荷・長期運用上のリスクが伴います。
代表的な方法には次のようなものがあります。
- 通信室の追加: スペースの犠牲、高コスト、煩雑な工事が必要。
- PoE エクステンダーの追加: 帯域幅の制限や、故障ポイントの増加。
- 光ファイバーへの置き換え: 光伝送機器、メディアコンバーター、別途電源工事が必要。
- 一般的なロングリーチケーブル(他社品): 性能がチップタイプに依存し、延長性能を完全に信頼できない可能性がある。
2. GigaREACH XL 長距離PoE がもたらす新たな価値
GigaREACH XL 長距離PoE は、標準的な構造化ケーブリングアーキテクチャに適合する UTP ソリューションとして、これらの課題を解決します。
- 最大 250m の長距離 PoE 伝送:
- 10 Mbps / 90W PoE を最大 250m までサポート。
- 100 Mbps / 90W PoE を最大 200m までサポート。
- 1 Gbps / 90W PoE を最大 150m までサポート(標準 Cat 6 より 50% 延長)。
- 容易な統合性:
- 標準的な Cat 6 と同じ設置ツール、手順、パネル、ジャックを使用して、既存のアーキテクチャに容易に統合可能です。
これらの長距離性能は、GigaREACH XL の内部構造と信号最適化技術により実現されています。次章では、その技術的背景を解説します。
3. 長距離伝送を可能にする技術と現場のメリット
GigaREACH XL が長距離PoEを安定して実現できる理由は、CommScope の独自技術である「導体サイズの最適化」と「撚り構造のチューニング」にあります。
これらの最適化を支えているのが、CommScope が “It’s all in the twist(すべては撚り構造にある)” と呼ぶ独自のケーブリング技術です。
21 AWG 導体による PoE 安定性と低損失伝送
GigaREACH XL は、独自撚り構造により業界最大クラスの太さとなる 21 AWG 導体を採用しています。
これにより、電流量の大きい 90W PoE++ 環境でも電圧降下を最小限に抑え、長距離でも安定駆動を可能にします。
- 低 DC 抵抗 → 電圧降下を大幅に低減
21 AWG の DC 抵抗(4.69 ohms/100m)は Cat6 の約半分で、電圧降下が小さくなり、長距離でも 90W 給電を安定確保できます。 - サイズ維持の工夫 → 標準 Cat6 と同等の外径を維持
太い導体を使用しながらも、薄い絶縁体やテープペアセパレーターを組み合わせ、23 AWG ケーブルとほぼ同じ外径を実現。施工性とインピーダンス特性を両立しています。
ネットワーク構成の簡素化と TCO(総保有コスト)削減
長距離伝送を可能にするだけでなく、GigaREACH XL はネットワーク構成そのものをシンプルにし、TCO(総保有コスト)の削減にも貢献します。
以下では、GigaREACH XL がどのようにネットワーク構成を簡素化し、TCO 削減に貢献するのかを解説します。GigaREACH XL は「UTP のまま」長距離を延長できるため、リスクを抑えながらネットワークをシンプルに保ち、運用コストの最適化に貢献します。
■ 中間機器の削減による障害ポイントの大幅低減
PoE エクステンダーやメディアコンバーター、ブースターボックスなどが不要になるため、故障ポイントが減少し、システム全体の信頼性が向上します。
■ OPEX(運用コスト)と環境負荷の削減
中間機器の撤廃によって、電力消費の削減、保守作業の減少、装置点数の削減によるGHG排出量の低減など、サステナビリティ向上にも寄与します。
■ 建物を壊さずに行える小規模ネットワーク更新(non-invasive)
“UTP のまま延長”が可能なため、壁や天井を開口せずにネットワーク更新ができ、最小限の工事でデバイスの追加が容易になります。
こうした導体設計と構造最適化により、GigaREACH XL は
「高出力の PoE 給電」「長距離伝送」「既存 Cat6 との互換性」という相反しがちな要件を同時に満たしています。
4. 延長ソリューションの選択肢と GigaREACH XL の優位性
市場の一般的な選択肢と比較した場合の技術的な優位性は以下の通りです。
| 比較軸 | CommScope GigaREACH XL | PoE エクステンダー併用 / 他社製品 |
| 最大距離 | 10 Mbps/90W で 250m | 一般的なエクステンダー方式では 150m 前後が目安とされることが多く、伝送速度や給電能力に制約が生じるケースがあります。 |
| 90W PoE の安定性 | 21 AWG 導体による低 DC 抵抗により、長距離・高電力でも安定。 | 延長機器の追加構成では、帯域幅や電源供給が制限される場合があり、機器点数が増えることで管理負荷が増す傾向があります。 |
| 施工互換性 | 標準 Cat 6 と同じ工具・手順。 | 中間に能動機器(エクステンダー)が必要となり、施工・途中に能動機器(エクステンダー等)を追加する必要があるため、施工・管理が複雑化しやすい構成となります。 |
| 25 年保証 | SYSTIMAX Assurance 適用(延長性能も保証対象)。 | ケーブルと機器の保証が個別に提供される際は、システム全体を一括でカバーする保証の対象外となるケースもあります。そのため、長距離伝送を前提とした一貫した保証体系を選ぶことが重要です。 |
| 1 Gbps 速度 | 1 Gbps/90W で 150m を保証。 | エクステンダー構成では、機器性能や帯域幅設計に依存し、速度面での制約が生じる構成も見られます。 |
5. 業界最高水準のサポート: SYSTIMAX 25 年保証の価値
GigaREACH XL は、CommScope の SYSTIMAX Assurance™ による最大 25 年の包括的保証 の対象となるロングリーチ・ソリューションです。
この保証は、ケーブルと接続ハードウェアを一貫してカバーできる点が大きな特徴です。
万一トラブルが発生しても、原因の切り分けや保証対応がシンプルになり、長期運用を前提とした設備でも安心して導入できます。
特に、監視カメラシステムやビル内 IoT インフラのように「24時間 × 年間稼働」が前提となる用途では、“25年間、同じ構成を安心して使い続けられる” という信頼性は、設備管理者や情報システム担当者にとって大きな価値となります。
6. 主な適用シーンと導入メリット(ユースケース)
GigaREACH XL は、長距離伝送・高出力 PoE・既存 Cat6 との互換性という特性から、さまざまな業種・用途で「100mの壁」を超える配線ニーズに応えています。
以下では、特に導入効果の高い代表的なユースケースを紹介します。
🔧 ユースケース一覧
以下は、GigaREACH XL の特性が特に効果を発揮する代表的なユースケースです。
■ 大規模工場の監視カメラ(90W PoE 必須)
課題: 工場敷地が広く、カメラを設置したい場所が既存の100m制約を超える。
解決: 中間機器なしで 最大200m(100Mbps)、最大250m(10Mbps) まで延長可能。
効果: 構成がシンプルになり、故障ポイントが激減・現場保守の負担も大きく低減。
■ 公共施設・空港・スタジアム
課題: APやデジタルサイネージを広い敷地に分散配置したいが、光とPoEを混在させた複雑な構成になりがち。
解決: GigaREACH XL は UTPのまま 給電+通信を単純化。
効果: 施工性が向上し、将来のレイアウト変更にも柔軟に対応。
■ 倉庫・物流センター(Wi-Fi AP 向け)
課題: 天井高・広さの影響で、AP までの距離が 100m を超えるケースが多い。
解決: 1Gbps/90W を 150m まで サポート。
効果: エクステンダー不要で、在庫管理やピッキングシステムのレスポンス向上に寄与。
■ 屋外デジタルサイネージ・IoT センサー
課題: 屋外設置では電源確保が難しく、設置コストが高くなりがち。
解決: 長距離PoEにより 電源敷設不要 のエリアが増え、設置コストを低減。
効果: 信頼性の高い屋外インフラを、低コストで迅速に展開可能。GigaREACH XL は、SYSTIMAX Assurance™ に基づく包括的なサポートによってカバーされています。
7. まとめと Cabling Cert Tech からのコメント
私たち Cabling Cert Tech は、技術の 「第三者テスター」 および 「技術解説メディア」 として、現場の課題を解決する新しい技術が登場し、ネットワーク設計の選択肢が広がることを歓迎しています。
近年、IoT デバイスの増加により “100m の壁” を超える長距離伝送のニーズが急速に高まっています。
今回解説した GigaREACH XL は、従来のエクステンダーや光ファイバーといった手法に加え、「Cat 6 UTP のまま距離を延ばす」という新しいアプローチ を提案するものです。
施工現場においては、「コスト」「難易度」「信頼性」 のバランスを見て最適な工法を選択することが求められます。
CommScope が提示する 「21 AWG 導体による低抵抗化」 や 「長期保証体制」 は、長距離 PoE を検討する際の重要な技術指標のひとつと言えるでしょう。
Cabling Cert Techでは今後も、メーカー各社の長距離伝送ソリューションを客観的に検証し、施工者・エンジニアの判断に資する情報を技術的観点から発信してまいります。
本記事は、CommScope 公式資料とご協力を得て、Cabling Cert Tech が日本市場向けに「技術背景」「導入ポイント」「実装上の留意点」 を整理して解説したものです。
📚 参照資料(Reference Documents)
本記事は、CommScope社が公開する公式技術資料を参照し、日本市場向けに Cabling Cert Tech が技術背景・導入ポイント・実装の注意点を整理して解説したものです。
■ CommScope GigaREACH XL 公式リソースページ
https://ja.commscope.com/systimax/gigareach-xl/
■ CommScope 公式ブログ
Going the Distance: Extending Network Reach to Meet Modern Demands
■ 技術資料 PDF
- Infographic: GigaREACH™ XL – Extend Your Network’s Reach, Not Your Risk
ダウンロード(PDF) - Brochure: SYSTIMAX® GigaREACH™ XL Extended Reach Category 6
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Cabling Cert Tech|技術ナレッジベース
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