工場やオフィスビルのネットワーク環境では、通信ケーブルが電力ケーブルと並行・近接して配線されるケースが増えています。その結果、電力系統から発生するノイズが通信回線に影響を与え、データ伝送エラーや装置の誤作動を引き起こすことがあります。

こうしたトラブルを未然に防ぐために重要なのが、「遮へい(シールド)」の設計と選定です。本記事では、冨士電線株式会社の技術資料をもとに、通信ケーブルにおける遮へいの基本原理から実際の選定ポイントまでを、現場目線でわかりやすく解説します。


第1章 はじめに:なぜ通信ケーブルの遮へいが重要なのか

通信用回路が他の回路(特に送配電ケーブル)と並行・接近している場合、誘導電流や電圧が発生し、通信システムの誤作動やデータエラー、ノイズ障害の原因となります。
例えば、LED照明やインバータ機器、モーター制御盤などから発生する高周波ノイズが通信ケーブルに干渉すると、パケットロスやリンク切断といったトラブルが生じることがあります。

このような誘導障害を防ぎ、通信の信頼性を確保するために、ケーブルに「遮へい(シールド)」を施すことが重要です。


第2章 誘導障害の種類と原理:電磁誘導と静電誘導

ケーブルで生じる誘導障害は、その発生原理によって「電磁誘導」と「静電誘導」に大別されます。

2-1. 電磁遮へい(電磁誘導対策)

電磁遮へいは、通信用回路と電力用回路の磁界結合により、通信用回路内に誘導電流が流れる現象への対策です。
このとき、磁束を吸収する鉄テープと渦電流を分散させる銅テープを組み合わせた「銅鉄遮へい(銅テープ1枚+鉄テープ2枚)」が高い効果を発揮します。

ポイント:銅は導電性に優れ、鉄は磁性体として磁束を吸収するため、両者を組み合わせることで電磁誘導ノイズを効果的に低減できます。

2-2. 静電遮へい(静電誘導対策)

静電遮へいは、電力用回路などの静電界によって通信用回路に誘導電圧が生じる現象を防ぐものです。
このような影響を抑えるための代表的な対策として、次のような方法が挙げられます。

  • 「軟銅テープ」や「アルミ箔貼付プラスチックテープ」を心線に巻く
  • 可とう性が求められる場合は「軟銅線編組」で覆う
  • 遮へい層を接地(アース)することで静電誘導を効果的に除去

ただし、実際の運用では遮へい層に電流が流れるため、導電率・厚さ・接地抵抗などにより効果に差が生じます。