
Cabling Cert Techより
本記事は、Cabling Cert TechのパートナーであるFluke NetworksのCabling Chronicles「Tier 1 fiber testing best practices for duplex VSFF connectors」を日本語化し、Cabling Cert Tech独自の技術解説を加えて編集したものです。
CS、SN、MDCなどのVSFFデュプレックス・コネクタは、データセンターの高密度化を支える重要な技術ですが、Tier 1光ファイバー試験では、使用する測定器やアダプター、テスト・リファレンス・コード(TRC)、基準設定方法によって試験手順が異なります。
本記事では、Fluke Networksの記事内容を紹介するとともに、後半の「Cabling Cert Tech 技術解説」で、VSFF環境における基準設定や測定方法の考え方を、現場視点から補足します。
「以下、Fluke Networks原文の日本語訳」
データセンターにおける高密度配線に対応するため、VSFF(Very Small Form Factor)デュプレックス光ファイバー・コネクタの普及が進んでいます。一部の試験機器は、これらの新しいインターフェースに対応していますが、対応していない試験機器では、Tier 1試験にいくつかの課題が生じ、推奨される1ジャンパー基準法から別の基準設定方法へ切り替える必要があります。 ここでは、これらのコネクタと、その試験におけるベストプラクティスについて詳しく見ていきましょう。
CSコネクタとSNコネクタ
SENKOが2018年に発表したCSデュプレックス光ファイバー・コネクタは、主にQSFP-DDトランシーバー・モジュールに2個のCSコネクタを収容できるよう設計されました。従来のLCコネクタと比較して、より小さな実装面積で、挿入損失および反射減衰量の性能向上を実現しています。1.25 mmフェルールを採用するCSコネクタはLCコネクタより40%小型で、13 mm幅のハウジング内で2本のファイバー間隔が6.25 mmのLCに対し、CSでは7.85 mm幅のハウジング内でわずか3.8 mmの間隔に配置されています。
そして、CSでもまだ十分に小型ではないと言わんばかりに、SENKOはその後、SNデュプレックス光ファイバー・コネクタを発表しました。SNでは、3.85 mm幅のハウジング内で2本のファイバーを縦方向にわずか3.1 mm間隔で配置しています。SNコネクタはLCコネクタより70%小型で、1台のQSFP-DDトランシーバー・モジュールに4個のコネクタを収容できるため、ファンアウト・ケーブルやカセットを使用せずにブレークアウト用途へ対応できます。
CSコネクタとSNコネクタはいずれも、超高密度のパッチング環境でも容易に操作できるよう、さまざまな長さのプッシュプル・タブを備えています。ラッチ構造のため縦方向に積み重ねる際にスペースを必要とするLCコネクタとは異なり、CSおよびSNコネクタは縦方向に密接して配置でき、さらなる高密度化が可能です。また、両コネクタとも極性をすばやく反転できます。

MDCコネクタ
SNに対抗するため、US ConecはVSFFデュプレックス・コネクタの自社版として、MDC(Mini Duplex Connector)を発表しました。MDCはSNよりわずかに小型で、縦方向に配置されたファイバーと、実績のある1.25 mmフェルールを採用しています。
SNと同様に、MDCもプッシュプル・タブと迅速な極性反転機構を備えています。ただし、MDCコネクタとSNコネクタには互換性がありません。相互のトランシーバー・インターフェースやパッチパネル・ポートに無理に挿入しないでください。

US ConecのMDCデュプレックス・コネクタは、SNコネクタよりわずかに小型です。
VSFFデュプレックス・コネクタの用途

出典:SENKO
SNコネクタとMDCコネクタは、主にブレークアウト構成で使用されます。これは、1つのスイッチ・ポートを複数の低速スイッチまたはサーバーへ接続する構成です。QSFP-DDトランシーバー・モジュールに4個のVSFF SNまたはMDCコネクタを収容することで、MPO-to-LCブレークアウト・ケーブルやカセットを使用せずに、4×100 Gigアプリケーションへ直接対応できます。構造化配線環境では、SNおよびMDCコネクタはLCコネクタの3倍のパッチパネル密度を実現し、ラック・スペースをより効率的に利用できます。
CS、SN、MDCコネクタの試験方法
SENKOとUS Conecは、CS、SN、MDCコネクタを他のメーカーにライセンス供与しているため、使用しているケーブルやコネクティビティ製品のメーカーから、これらのコネクタが提供されている場合があります。一方、これらは比較的新しいコネクタであるため、使用している光源/パワー・メーター(LSPM)や光損失測定器(OLTS)に、CS、SN、MDCのインターフェース・ポートが搭載されていない場合もあります。
Fluke Networks SimpliFiber™ Proのように、1つのポートを使用して各ファイバーを個別に試験するLSPMでは、試験対象のパーマネント・リンクの両端に、CS、SN、またはMDCからLCへ変換するブレークアウト・コードが必要です。この構成では、各ファイバーについて減衰量を測定する必要があるため、両端で光源とパワー・メーターを一方のファイバーから次のファイバーへ順次接続し直す必要があります。ここで重要なのは、ローンチ・コードをLSPMから取り外す必要があるため、2本目のファイバーへ接続する前に、あらためて基準測定を行わなければならないことです。

Fluke Networks CertiFiber™ Proのように、デュプレックス試験用に設計されたOLTSを使用する場合(これにより試験時間を大幅に短縮でき、デュプレックス・システムには推奨される試験器です)、MDCコネクタの試験ではブレークアウト・コードは必要ありません。これは、CertiFiber ProがMDC VSFFアダプターおよびテスト・リファレンス・コード(TRC)に対応しており、1ジャンパー基準法による試験が可能だからです。この動画では、Fluke NetworksのJim Davis氏がCertiFiber Proを使用し、MDC VSFFコネクタで終端された光ファイバー・リンクを1ジャンパー基準法で試験しています。
Fluke Networks CertiFiber™ Proを使用したMDCコネクタの試験方法
ただし、CSまたはSNコネクタを試験する場合は、引き続きブレークアウト・コードが必要です。この構成では、ブレークアウト・コード側の2つのLCコネクタをOLTSに接続するため、試験器を移動する必要はありません。OLTSでは、伝送方向に沿って試験すればよいため、この構成では1回の試験と1回の基準測定だけで済みます。

例外的な3ジャンパー法
MDCアダプターおよびTRCを使用できるCertiFiber Proでは、基準設定に推奨される1ジャンパー法に対応しています。一方、CSまたはSNコネクタをブレークアウト・コードを使用して試験する場合は、依然として3ジャンパー基準法が必要です。
- LCローンチ・コード(TC1およびTC2)を使用して基準を設定し、端面接続部の状態を確認します。
- コードを光源側ではなくパワー・メーター側から取り外し、受信コード(TC3およびTC4)を追加します。LCアダプターを使用してローンチ・コードと受信コードを接続し(TC1とTC4、TC2とTC3)、各ペアの損失が0.25 dB未満であることを測定して確認します。その後、基準値を0 dBに設定します。
- 第3の手順では、基準設定後に、適切な2 mのデュプレックス置換コード(substitution cord)を挿入します。この置換コードは、接続前に端面を検査・清掃し、低損失であることを確認する必要があります。損失の大きいコードを使用すると、試験対象の配線が負の損失、すなわち見かけ上の利得(gain)を示す可能性があります。置換コードを接続した状態で、基準を再設定します。
- 置換コードをCS-to-LCまたはSN-to-LCブレークアウト・コードに交換し、CSまたはSNコネクタを試験対象の配線に接続します。その後、測定を行います。この測定値には、光ファイバーの損失と2個のCSまたはSNコネクタの損失が含まれ、そこから基準コードおよびLCコネクタの損失が差し引かれます。

原文情報
原文タイトル:Tier 1 fiber testing best practices for duplex VSFF connectors
公開日:2026年4月29日
掲載:Fluke Networks Cabling Chronicles
メーカー:Fluke Networks
日本語版編集:Cabling Cert Tech
Cabling Cert Tech 技術解説
VSFF(Very Small Form Factor)デュプレックス・コネクタは、データセンターにおける高密度配線を実現する重要な技術です。しかし、コネクタが小型化・高密度化すると、変わるのはパッチパネルやトランシーバーの実装密度だけではありません。Tier 1光ファイバー試験の方法や基準設定にも影響します。
CS、SN、MDCはいずれも2心のデュプレックス光接続に使用されますが、測定器側のインターフェースや専用アダプター、テスト・リファレンス・コード(TRC)の対応状況によって、現場で使用できる試験方法が異なります。このため、VSFF配線を導入する際には、配線部材だけでなく、施工後にどのように試験するかまで設計段階で確認しておくことが重要です。
VSFF化で変わるのはコネクタだけではない
LCデュプレックス・コネクタでは、長年にわたり試験方法や測定アクセサリーが整備されてきました。一方、CS、SN、MDCのようなVSFFコネクタでは、使用する測定器がそのインターフェースに直接対応しているとは限りません。
測定器に対象コネクタ用のインターフェースがない場合、VSFFからLCへ変換するブレークアウト・コードやアダプターが必要になります。この変換部分が加わることで、基準設定時と実測時の接続構成をどのように管理するかという新たな課題が生じます。
ここで重要なのは、単に測定値が規定値以内かを確認することだけではありません。測定結果の信頼性を確保するためには、どのコード、アダプター、接続点を基準設定に含め、どこからを試験対象として測定しているのかを明確にする必要があります。
これはCabling Cert Techが重視している、「測定値を管理する」のではなく「測定前提条件を管理する」という考え方にもつながります。
1ジャンパー法が使えるかどうかが大きな分かれ目
光損失測定では、基準設定方法によって、最終的な測定結果に含まれる接続損失の範囲が変わります。
今回のFluke Networksの記事では、MDCコネクタについて、CertiFiber Pro用のMDC VSFFアダプターと対応するTRCを使用することで、推奨される1ジャンパー基準法による試験が可能であることが紹介されています。一方、CSまたはSNコネクタを、試験器側で対応するCS/SNインターフェースがない状態で、ブレークアウト・コードを使用して試験する今回の記事記載の構成では、3ジャンパー基準法を使用します。したがって、試験方法はコネクタ形式だけでなく、試験器の対応インターフェース、アダプター、TRCなどの構成によって決まります。
この違いは、単なる準備作業の違いではありません。基準設定に使用するコードや接続点が増えるほど、どの接続点を測定値に含めるのか、どの接続損失を基準設定で差し引くのか、基準設定後にどのコードを交換するのか、といった条件管理が複雑になります。
したがって、VSFFコネクタの試験では、「どの測定器を使用するか」だけでなく、「その測定器でどの基準設定方法が利用できるか」まで確認することが重要です。
LSPMとOLTSでは現場作業が大きく異なる
VSFFコネクタのような高密度配線では、使用する測定システムによって作業効率にも大きな差が生じます。
光源とパワー・メーターを組み合わせたLSPMでは、各ファイバーを個別に測定するため、測定するファイバーを切り替える際に光源側とパワー・メーター側の接続を変更する必要があります。特に今回の記事で説明されている構成では、ローンチ・コードを測定器から取り外すため、次のファイバーを測定する前に再度基準設定を行う必要があります。
これに対し、デュプレックス試験用に設計されたOLTSでは、送受信方向を利用して2心を一つの試験構成として扱えるため、試験器を移動させる必要がなく、作業を効率化できます。
高密度配線では試験本数そのものが増えるため、こうした1回あたりの作業差が、全体の試験時間に大きく影響します。また、接続変更の回数が増えるほど、コネクタ汚染や接続ミス、基準設定条件の変化といった要因も増えます。
したがって、測定器の選定では測定精度だけでなく、高密度環境における基準設定の再現性と作業手順の単純化も重要な評価ポイントになります。
現場で確認しておきたいポイント
VSFF配線を施工・試験する場合は、試験開始前に、使用するコネクタ形式、測定器の対応状況、専用アダプターやTRCの利用可否、ブレークアウト・コードの必要性、基準設定方法、基準設定時と実測時の接続構成、コネクタ端面の検査・清掃、再基準設定の必要性を確認しておく必要があります。
特に重要なのは、基準設定後に試験構成のどの部分を変更するかです。光損失測定では、接続するコードやアダプターを変更すると、それ自体が測定結果に影響する可能性があります。したがって、基準を設定した後の接続変更は、単なる作業手順ではなく、測定条件の一部として管理する必要があります。

Cabling Cert Techからのポイント
VSFFコネクタの普及によって、データセンターの配線密度はさらに高まっていくと考えられます。しかし、Tier 1試験では、「コネクタが小さくなっただけ」と考えることはできません。
コネクタ形状が変われば、測定器との接続方法、使用するテスト・リファレンス・コード、基準設定方法、ブレークアウト・コードの必要性なども変わる可能性があります。そのため、CS、SN、MDCなどのVSFFコネクタを採用する際には、配線システムの設計と同時に、「どの測定器を使用し、どの基準設定方法で、どの範囲を測定するのか」まで確認しておくことが重要です。
高密度化が進むほど、試験時の接続変更や基準設定の回数を減らし、測定前提条件を一定に保つことの重要性も高まります。VSFF環境では、測定器のコネクタ対応状況は単なる利便性の問題ではなく、試験作業の再現性と信頼性を確保するための重要な設計要素と考えることができます。
関連情報|Versivソフトウェア・リリースノート
CertiFiber™ Proを含むVersivシリーズでは、ソフトウェアのアップデートにより機能改善や対応内容の追加が行われています。
Cabling Cert Techでは、Fluke Networksが公開するVersivソフトウェア・リリースノートを日本語で紹介しています。
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