
本ブログ記事は、パンドイット日本支社のサポートの下、提供されたセミナー資料などを参考に、Cabling Cert Techが独自に作成しました。製品に関する詳細は、パンドイット日本支社の公式ページのお問い合わせ窓口にお尋ねください。
目次
1章:あと少し長さが足りない―現場で繰り返されるケーブル長の悩み
監視カメラやWi-Fiアクセスポイント、IoTセンサーを設計・施工する際、「あと20m足りない…」という経験をされたことはありませんか?
LAN配線は、TIA/ISO/IEEE 802.3規格で最大100mと定められています。
そのため、広い倉庫やキャンパス、スマートビルの現場では、機器配置を変更したり、中継器を追加したりせざるを得ないケースが頻発しています。
設計者やSIerにとって「100mの壁」は、長年の制約でした。
注記: 本記事で紹介する Panduit Extended Reach ケーブルは、北米では発売済みですが、日本市場では近々発売予定の製品です。発売時期や仕様の詳細については、パンドウイット日本支社の公式お問い合わせ窓口 にお尋ねください。
2章:市場背景と一般的な解決アプローチ
「100mの壁」による制約は、監視カメラやWi-Fiアクセスポイント、IoTセンサーなどの長距離配線需要が高まる中で、設計・施工現場にとって長年の課題でした。
このような背景を受けて、業界では主に2つの解決策が採用されてきました。
- Extender方式:PoEエクステンダーや中継器を挿入し、100mごとに信号と電力を再生成。
- ハイブリッド方式:光ファイバーでデータを送り、銅線で電力を供給する複合ケーブルを使用。
いずれも実績のある有効な手法ですが、中継器の設置や特殊施工によるコスト増・保守負担は避けられません。
3章:PanduitのExtended Reachケーブル
こうした課題に対し、Panduitはまったく異なるアプローチを提示しました。
それが TX6™ Extended Reach Category 6 U/UTPケーブル(22AWG) です。
技術的特徴を4つの観点から確認
Extended Reachケーブルの強みを理解するために、Panduitが示した検証データを4つの観点から確認していきます。
3.1. 22AWG導体による低抵抗化
標準的なCat6ケーブル(AWG23/24)に比べ、22AWGの太径導体を採用。
AWG24と比較して約40%も抵抗値が低く、PoE++給電時の電力損失を大幅に抑えます。
これにより、電圧降下や発熱のリスクを低減できます。

3.2. 150長ケーブルでの挿入損失確認
低抵抗化の結果として、150mチャンネルにおける挿入損失(IL)も規格要件を満たすことが確認されました。
これは標準チャンネル長(100m)を超越した領域でも、信号減衰を十分に抑制できていることを示しています。

3.3. その他の伝送性能パラメータの検証
さらに詳細測定では、NEXT、PSACRF、RLといった重要な伝送性能パラメータも150mで要件を満たすことが示されています。
これにより、単なる「距離延長」ではなく、信号品質も規格レベルで保証されていることが示されています。



3.4. PoE++(IEEE 802.3bt準拠)対応
Extended Reachケーブルは、最大90Wを供給可能なPoE++に準拠しており、DC抵抗・抵抗アンバランス・ペア間抵抗アンバランスの各要件も満たしていることが確認されています。
さらに LP(Limited Power)認証を取得し、ケーブルバンドル時の発熱リスクを安全に管理できます。



4章:Extended Reachが有効なユースケース
Extended Reachケーブルは、以下のような長距離・高電力PoE配線の現場で特に効果を発揮します。
- 倉庫・物流センター:天井が高く、監視カメラやセンサーを遠隔に配置するケース。
- 大学キャンパス・工場敷地:建物間や広い敷地内にWi-Fi APやカメラを設置する場合。
- スマートビル・オフィス:高出力PoE++でも安定給電できる太径ケーブルは将来投資に有効。
- 高速道路・道路インフラ:道路監視や交通信号の制御装置において、PoEによる長距離配線が有効。
- 空港・港湾:数百メートル規模に広がる屋外監視やIoTセンサー設置に対応。
- 大規模アリーナ・競技施設:サッカー場やバスケットボール競技場、コンサート会場などで、多数の監視カメラやWi-Fiを広範囲に設置する場合に有効。
5章:現場検証と今後の展望
どんなに優れた技術も、現場での検証なくしては安心できません。
Panduitは、業界標準のケーブル認証試験機メーカーである Fluke Networks、AEM (AEPジャパン株式会社)とも連携し、Extended Reachケーブルの検証体制を整えています。
将来的には、Fluke Networksのテスターでの認証試験にも対応予定で、現場導入の信頼性がさらに高まると期待されます。
6章:長距離配線アプローチの整理
「PoEによる長距離配線」という課題に対し、業界にはいくつかの確立された手法と、Panduitが提案するケーブルの太径化というアプローチがあります。
いずれの方式にも長所と短所があり、「どの現場で、何を最優先するか」によって最適な選択肢は変わります。たとえば、数百メートルを超える超長距離が必要であればファイバー併用のハイブリッド方式が有効ですが、中継器の設置や保守負担を避けたい場合には、ケーブル単体で延長可能なソリューションが適しています。
最終的な設計判断は、PoEの性能要件(Type/Class)を考慮することが不可欠です。以下に、長距離配線における主要な三つのアプローチを、技術的特徴と現場での留意点から比較表として整理しました。
アプローチ | 主な技術 | 特徴・留意点 |
---|---|---|
Extender方式 | PoEエクステンダー+Cat5e/Cat6(AWG23/24) | 標準規格を順守しつつ延長。中継器設置によるコスト増・保守負担あり。 |
ハイブリッド方式 | 光ファイバー+電源線の複合ケーブル | 数百m超の長距離に対応可能。ただし施工が特殊でコスト高。 |
太径ケーブル延長(Panduit Extended Reach) | Cat6(22AWG)Extended Reachケーブル | ケーブル単体で150m動作を確認(規格外だが検証データ公開済み)。PoE++・LP認証対応。 |

7章:まとめ
ここまでの検証を踏まえて、Panduit Extended Reachケーブルの特長を整理します。
Extended Reachケーブルが提供する価値を整理すると、従来の延長方式と比べて以下の3点が特に重要です。
- 中継器不要のシンプル設計
PoEエクステンダーやメディアコンバータなどの中継器を必要とせず、ケーブル単体で150mまでの安定動作を実現できます。
設計・施工・保守の簡素化により、故障リスクを低減し、システムの安定性を高めます。 - 技術的な信頼性
この150mでの動作は標準チャンネル長(100m)を超越した領域ですが、Panduitは自社ラボでの検証データを公開しています。
PoE++(IEEE 802.3bt)に準拠し、さらにLP認証を取得しているため、発熱や電圧降下のリスクを適切に管理し、長距離・高電力給電における信頼性を担保しています。 - 導入効果
中継器を不要にすることで設備を削減し、施工スペースを節約できます。
結果的に、設計者やSIerは新しい設計自由度を享受し、TCO(Total Cost of Ownership)の削減にも直結します。

注記: 本記事で紹介した Extended Reach ケーブルは、日本市場では近々発売予定の製品です。導入をご検討の際は、詳細情報について パンドウイット日本支社の公式お問い合わせ窓口 までお問い合わせください。
🔗関連コンテン関連コンテンツのご紹介
Extended Reachをさらに理解いただくための関連コンテンツをご紹介します。
📖 ブログ記事
- PoE配線システム設計の必須知識 – TypeとClass
Extended Reachを検討する際に重要となるPoEのTypeとClassの基礎知識を整理しています。
👉 記事を読む:PoE配線システム設計の必須知識 – TypeとClass
📑 ホワイトペーパー
- Extending Copper Cabling Reach for 1000BASE-T
150m動作の詳細検証データ、PoE++環境での電圧降下評価、設計条件を解説しています。
👉 フォーム入力の上、ホワイトペーパーをダウンロード
🎥 動画コンテンツ
- Extended Reachケーブルの概要紹介
ケーブル構成や利用イメージを短時間で理解できる動画です。
👉Youtube 動画を視聴する。(画像をクリック)
***********************************