
【注記】 本記事は、AEPジャパン株式会社のサポートを受け、AEM社提供の動画「Power over Ethernet In-Line/PassThru Testing Overview」を基に、Cabling Cert Techが独自の視点で作成したものです。
目次
1. はじめに
ネットワークインフラの構築・運用に携わる皆様、「原因不明のネットワーク障害」ほど頭を悩ませる問題はないでしょう。特に、監視カメラやWi-Fiアクセスポイント、IP電話などで広く利用されるPoE(Power over Ethernet)環境では、予期せぬ接続断やパフォーマンス低下がビジネスに直結する大きな問題となり得ます。
AEM社の新しいパススルーアダプターは、まさにこうした現場の悩みを解決するために開発された画期的なトラブルシューティングツールです。このツールの最大の特徴は、トラブルが疑われるPoEデバイス(カメラなど)を実際に稼働させたまま、ネットワークリンクの状態を詳細に分析できる点にあります。

この記事では、このアダプターがどのようにして現場の複雑な問題を解決するのか、具体的な課題とその解決策を詳しく解説していきます。
2. PoE環境で頻発する典型的なトラブルと原因
PoE環境におけるトラブルは、常に発生しているとは限りません。むしろ、特定の条件下でのみ発生する「断続的な問題」であることが多く、これが原因特定を困難にしています。
ケース1:深夜にだけ発生する「断続的な障害」
「夜間だけ監視カメラの映像が途切れる」といった報告を受け、現場でケーブルテスターを使ってリンクをチェックしても結果は「合格」。しかし、翌朝にはまた同じ問題が再発…。このような経験はございませんか?
技術者が現場にいない時間帯に発生するこれらの問題は、周囲の環境変化(例:夜間照明の点灯によるノイズ増加)や、デバイス自体の動作モードの変化(例:カメラの赤外線モードへの切り替え)が引き金となっている可能性があります。しかし、その「犯行の瞬間」を捉えるのは至難の業でした。
ケース2:デバイスの特定の動作が引き起こす通信不具合とパフォーマンス低下
「カメラのパン・チルト・ズーム操作をすると、映像がカクついたり接続が不安定になったりする」といった問題もよくあります。これは、デバイスの動作が電力需要やデータ通信量に与える影響が原因である可能性が高いですが、従来のテスターではその因果関係をリアルタイムで捉えることは困難でした。
3. PoE トラブルシューティング①:データロギングで「PoE 電源が落ちる原因」を特定
ケース1のような「断続的な障害」に対して、このパススルーアダプターは「データロギング機能」という強力な解決策を提供します。
この機能は、テスターを現場に設置したまま、1時間から最大24時間といった長期間にわたってリンクのデータを自動的に記録し続けることができます。技術者が常に監視していられない時間帯に発生する問題の証拠を、確実に捉えることが可能です。
取得したログは、PCソフトウェア「Test Data Pro」を介してタイムスタンプ付きのCSVファイルとして提供されます。このファイルには、障害解析に不可欠な以下の詳細なデータが含まれています。
- ✔ 信号対雑音比(SNR)
- ✔ PoE電力、電圧、電流
- ✔ データ送信速度

これにより、「夜中の2時3分にSNRが急激に低下し、同時に電力供給が不安定になった」といった事実をデータに基づいて正確に特定できます。もう、問題の再現をひたすら待つ必要はありません。
4. PoE トラブルシューティング②:ライブトレースで電圧・電力監視をリアルタイム可視化
ケース2のような「特定の動作が引き起こす問題」には、「プロットトレース」によるライブ監視機能が絶大な効果を発揮します。
これは、電力、データ転送速度、SNRといった重要なメトリックをリアルタイムのグラフで表示する機能です。これにより、デバイスの動作がネットワークリンクに与える影響をその場で視覚的に確認できます。
参照ビデオで実演されたデモンストレーションは非常に象徴的です。技術者がカメラのレンズを手で覆い、赤外線(IR)モードを起動させると、グラフは即座に以下のような変化を示しました。

• 電力需要(青い線)が急上昇:IRライトを点灯させるため、消費電力が約3Wから4W以上に増加。
• データ送信速度(オレンジの線)が急降下:パフォーマンスが大幅に低下。
このように、「デバイスの特定の動作(原因)」が「電力と通信への影響(結果)」として、その場で明確に可視化されます。これにより、「このデバイスは高負荷時にこれだけの電力を要求するため、現在のPoEスイッチの供給能力では不安定になる可能性がある」といった、より深いレベルの診断が可能になります。
5. まとめ:PoE 障害対策を「推測」から「確認」へ
AEMの新しいパススルーアダプターは、既存のNSAやTest Proテスターに追加するだけで、PoE環境のトラブルシューティングを新たな次元へと引き上げ、PoE 不安定 解決の切り札となります。
- 断続的な問題には「データロギング機能」で、不在時の証拠を確実に捉える。
- リアルタイムの問題には「ライブトレース機能」で、原因と結果の相関を視覚的に捉える。
「実際のデバイスを稼働させたまま」テストできるため、シミュレーションでは見えてこなかった現実の問題を明らかにします。これにより、PoEに関する複雑な問題の解決にかかる時間を大幅に短縮し、トラブルシューティングを「経験に基づく推測」から「データに基づいた確証」へと変えることができるでしょう。
こうした手順を踏むことで、ネットワーク機器のPoE 不具合を正確に把握し、迅速な解決が可能になります。
さらに詳しい仕様や活用例は製品カタログにまとめていますので、ぜひご確認ください。
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⬇️PoE障害対策に役立つ PoE パススルー アダプタのカタログはこちらからダウンロードできます。



