
本記事について:
本記事は、Fluke Networksが公式サイトで公開している「New Solutions for VSFF Applications」(August 12, 2025 / General, Best Practices)を、フルーク・ネットワークスの了解の下、Cabling Cert Techが日本語に翻訳・再構成したものです。
目次
はじめに
新しい超小型フォームファクター(VSFF)コネクタ ―― MDC、CS、SNのデュプレックスコネクタや、MMCの多心コネクタ ―― は、データセンターのような高密度ファイバーアプリケーションで急速に普及しています。
こうした環境を円滑に運用するには、コネクタを正しくテスト・検査・クリーニングすることが不可欠です。導入時でも、再構成やトラブルシューティングの場面でも、リンク性能の認証や汚染の検出・除去を効率化するための基本ツールが大きな役割を果たします。
1章 リンク性能の認証はアプリケーションのサポートを保証する
業界標準では、アプリケーションごとに最大挿入損失値やリンク長が定められています。 したがって、総挿入損失とリンク長を測定する Tier 1認証 は、アプリケーションを確実に サポートするために不可欠です。さらに認証テストでは連続性や極性も確認され、正しく機能することが保証されます。
Tier 1認証は、多くの場合ファイバー配線システムの製品保証を取得する前提条件であり、施工品質を証明する最良の方法であると同時に、将来トラブルが発生した際の性能基準(ベンチマーク)としても役立ちます。
2章 認証テストに必要なツールと手順
データセンター内のファイバーリンクを認証するには、Fluke Networksの CertiFiber™ Pro のような光損失テストセット(OLTS)とテストリファレンスコード(TRC)が必要です。
認証テストの最初のステップは、TRCによる損失を基準値として設定することです。これには、両端の接続損失を含み、不確実性を最小に抑える推奨の 1ジャンパーリファレンス 方式 を用いる必要があります。CertiFiber Proでは、セットリファレンスウィザードを使えば、直感的なアニメーションで基準値の設定からTRCの性能確認までのプロセスを簡単に進められます。
3章 1ジャンパーリファレンスと適用範囲
1ジャンパーリファレンスを行うには、使用するOLTSとTRCがテスト対象リンクと同じ コネクタインターフェースを持っている必要があります。異なる場合は、精度が劣る 3ジャンパーリファレンス(ハイブリッドTRCを使用) を用いることもあります。
幸い、CertiFiber Proは多様な交換式アダプターとTRCに対応しており、新しいMDC VSFFアダプターやTRCを含め、1ジャンパーリファレンスでのテストを行うことが可能です。また、自社のJim Davisによる動画では、CertiFiber Proを用いてMDC VSFFコネクタで終端されたファイバーリンクを1ジャンパーリファレンス方式でテストする方法をご紹介しています。

Fluke Networks CertiFiber Proを使ったMDCコネクタの検証手順
4章 コネクタは常に汚染を点検する
光ファイバーコネクタを接続する前には ―― パッチコードや幹線ケーブル、あるいは認認証ストに使用するTRC上のコネクタであっても ―― 必ず端面を点検し、清浄度を確認する必要があります。
汚染は光ファイバー障害の最大の原因であり、たった一つの微粒子でもファイバーコアに損失や反射を引き起こし、ネットワーク性能を劣化させます。汚染された端面はパッチ・コードだけでなく、スイッチやサーバーといった高価なアクティブ機器のポートを損傷することもあります。端面のクリーニングは必要なときだけにすべきですが(清掃そのものが 汚染を引き起こす可能性があるため)、端面が清浄かどうかを確認する唯一の方法は、点検することです。

端面が清浄かどうかを確認する唯一の方法は、点検することです。そのための最も確実な方法は、専用のツールを使用することです。
5章 IEC規格に基づく検査基準
IEC 61300-3-35規格は、最小限の顕微鏡要件、検査手順、およびコアやクラッド領域における欠陥や傷の数・大きさに基づく清浄度の基準を定義しています。
IEC規格に従って手作業で傷や欠陥を数え、等級付けすることは膨大な時間を要し、かつ人的エラーを招きやすい作業です。そのため、Fluke Networks FI-3000 / F12-7300 FiberInspector™ Ultra や FI-7000 FiberInspector™ Pro といった専用の検査ソリューションを使う方が効率的です。これらはアルゴリズム処理によって端面を判定・認証し、IEC 61300-3-35に基づいた自動の合否判定(PASS/FAIL)を提供します。
6章 VSFFデュプレックスコネクタの点検
MDC、SN、CSといったVSFFデュプレックスコネクタの端面検査も、FI-7000 FiberInspector Pro を使えば容易です。IEC 61300-3-35に準拠した清浄度認証を行い、欠陥がある部分は赤で、清浄な部分は緑で表示されます。
FI-7000はVersiv™モジュール方式を採用しており、CertiFiber Pro OLTSと連携してテスト中の簡易な点検が可能です。また、CertiFiber ProのセットリファレンスウィザードにはFiber Inspectorボタンが搭載されており、基準値設定の際にTRCコネクタの端面を点検するようリマインドしてくれます。
7章 多心コネクタ対応とFI-3000の利点
交換可能なチップを利用する FI-3000 FiberInspector Ultra は、IEC 61300-3-35規格に基づいて、多心MPOコネクタ(12、16、24、32心)やVSFF MMCの端面を自動で合否判定できます。自動焦点機能や広視野を備え、ファイバー端面全体を表示できるほか、特定のファイバーを拡大表示して詳細に確認することも可能です。
さらにFI-3000は人間工学に基づいた設計と、内蔵のPortBright™照明機能、シングルファイバーや多芯端面の拡大能力を備えており、高密度なデータセンター環境でのVSFFバルクヘッドコネクタ検査に最適です。加えて、FI-3000はVersivシステムと統合され、Tier 1認証中にファイバー端面を点検するための統合プラットフォームを提供します。
8章 必要なときだけクリーニングする
検査で不合格となりコネクタ端面が汚染されている場合のみ、クリーニングを行うべきです。ただし、その際に適切なクリーニングツールを手元に用意しておくことで、時間と手間を大幅に節約できます。
端面をクリーニングする際は、必ず光ファイバー専用に調合された溶剤とワイプを使用してください。エアダスターやスプレーは、粒子を吹き散らすだけで、油分・残留物・帯電した 微細な塵を効果的に除去することはできません。イソプロピルアルコールや、ファイバー用に設計されていない溶剤を使うと、除去困難な残留物を残す可能性があります。
Fluke Networksの光ファイバークリーニングキットには、専用に調合された溶剤ペンと、 125枚の糸くずの出ないワイプが入ったクリーニングキューブが含まれており、それぞれで最大4つの端面を清掃できます。

Fluke NetworksのQuick Cleanクリーナーは、テスターのポートなど狭い 場所にも届き、一貫した清掃を残留物なく実現するよう設計されています。
9章 Quick Cleanクリーナーの特長
パッチパネル内や機器ポート、テスターのインターフェースなど端面をクリーニングする際は、Quick Clean™クリーナーが最適です。従来の綿棒型クリーナーは使用者の手技に依存しますが、Quick Cleanクリーナーは押し込むだけのシンプルな操作と「カチッ」という音で、毎回安定したクリーニングを実現します。さらに、Quick CleanクリーナーはVSFFデュプレックスMDCや多心MMCを含む幅広い種類のコネクタに対応しています。