JEITA 情報配線システム国際標準カンファレンス 2024において、当時情報配線システム専門委員会 ツイストペア情報配線ワーキンググループ主査を務めていた浅香氏による「LANケーブル JECTEC型式認定(仮名)※について」の講演が行われました。このブログでは、その講演内容を基に、型式認定制度の意義とその重要性について解説します。


日時:2024216日(金) 16:0516:45

場所:TKPガーデンシティPREMIUM 品川高輪
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注記

※:当該型式試験は、現在「Cat.6A LANケーブル型式試験」という名称でJECTEC様から試験サービスが提供されています。詳細はJECTEC公式ホームページのこちらからご覧いただけます。

概要

2024年2月に開催されたJEITAのセミナーでは、新たなLANケーブルの型試験が紹介されました。特に、規格に適合しない安価な市販ケーブルが市場に流通していることに対して、エイリアン・クロストーク規格に非対応とみなされる製品のご購入リスクを防ぐ取り組みが注目されています。このブログでは、その型式試験の目的や背景についてセミナー資料を参照しながら解説します。

はじめに

また、スライド4から、無線通信の高速大容量化に伴い、有線ネットワークでもより高性能なCat6Aケーブルが求められるようになっていることがわかります。2019年以降のWi-Fi6やWi-Fi6Eの登場により、有線・無線の両方で通信速度の向上が進み、それに対応するためにCat6Aケーブルの利用が増えている状況です。この背景から、Cat6Aケーブルの規格への適合性を評価する公平な第三者機関による試験がさらに重要視されるようになっています。

規格に準拠していない市販製品の現状

スライド5によると、規格に準拠していない市販製品が依然として市場で販売されている状況が続いています。特にCat6Aケーブルの中には、エイリアン・クロストーク(Alien Crosstalk)対策が施されていない、低品質な製品が存在しており、これが多くのトラブルの原因となっています。

規格に準拠していない市販製品の現状

スライド5によると、規格に準拠していない市販製品が依然として市場で販売されている状況が続いています。特にCat6Aケーブルの中には、エイリアン・クロストーク(Alien Crosstalk)対策が施されていない、低品質な製品が存在しており、これが多くのトラブルの原因となっています。

これらの規格外製品は、価格が安いために消費者の選択肢として利用されやすい一方で、実際には高品質なネットワークを構築する上で大きなリスクを伴います。高いデータ転送速度や信頼性を求める場合、エイリアン・クロストークへの対策は必須であり、型式試験によってこうした低品質な製品が市場に流通しないようにすることが求められています。このような背景から、業界団体(JEITA)は適切な製品の普及を促進し、消費者のリスクを低減するための型式試験の整備を進めています。

背景と目的

スライド3〜5では、Cat6Aケーブルの普及状況や規格に準拠していない市販製品が依然として販売されている現状について説明しました。Cat6Aケーブルの普及が進む中で、無線通信の高速化に伴う需要に対応するため、高品質なケーブルの重要性がますます高まっています。しかし、規格外の製品が市場に出回り続けることで、エイリアン・クロストークによる通信性能の低下などのリスクが生じています。

こうした現状に対応するために、JEITAは第三者機関JECTECによる型式試験の導入を進めており、その目的は市場に流通するケーブルの品質を確保することです。この型式試験により、ユーザーが安心して高性能なネットワーク環境を構築できるようにすることが期待されています。

JECTECの紹介

今回の型式試験の実施を担うのは、電線関連の認証試験を行う第三者機関である「JECTEC」です。JECTECは、日本国内におけるJIS認証機関として国から登録を受けており、電線に関するJIS認証や試験成績書の発行を行う専門機関です。また、電線に係るJNLA試験所としてもNITEの登録を受けており、JNLAマークを付した試験成績書を提供しています。この認証機関の豊富な経験と技術を活かし、Cat6A LANケーブルの型式試験を実施することで、規格に準拠した高品質な製品が市場に流通することを目指しています。

エイリアン・クロストークとは

エイリアン・クロストーク(Alien Crosstalk)とは、隣接するケーブルやコネクタから受ける「外来ノイズ」による干渉のことを指します。特に、Cat6Aケーブルのような高速通信環境では、このエイリアン・クロストークが大きな問題となります。

ケーブルの測定について(スライド11〜18)

スライド11から18では、Cat6Aケーブルに対して実施されるエイリアン・クロストークの測定について説明されています。この測定では、エイリアン・クロストークが求められる基準内に収まっているかどうかを評価し、適合・不適合の判断が行われます。実際の試験結果では、いくつかのケーブルで合格と不合格の結果が示されており、合格領域に入っているかどうかが判断基準とされています。さらに、ネットワークアナライザを使った測定により、標準的なケーブルの性能を比較し、基準に基づいた適合性を確認するプロセスも紹介されています。

パッチコードの検証結果(スライド22〜23)

スライド22では、Cat6Aパッチコードの測定結果が示されており、Return Loss(RL)とNear End Crosstalk(NEXT)の指標を用いて評価された結果がいくつかの製品に対して合否として表示されています。特に、導体径やケーブル構造の違いが伝送性能に影響し、不合格となった製品も確認されています。この結果から、規格に適合しない低品質なパッチコードがネットワークの性能に悪影響を及ぼす可能性があることが示されています。

一方で、スライド23では、適切なケーブル構造設計を施し、合格したパッチコードの結果が示されています。合格した製品では、導体の構造やケーブルの太さが適切であり、Return LossやNear End Crosstalkといった電気的性能の基準を満たしていることが確認されています。これにより、正しい設計と規格準拠の重要性が強調され、適切な品質管理が施されたパッチコードが安定したネットワーク通信を可能にすることが分かります。

まとめ

型式試験の対象と試験方法 型式試験の対象は、Cat6A/Cat6A U/UTPケーブルやパッチコードで、規格に適合していない製品が流通しないよう、エイリアン・クロストークの測定が求められています。また、試験に合格した製品はJECTECのウェブサイトに掲載される予定です。型式試験は現在、制度化に向けて検討中であり、正式な運用開始が待たれています。

新たな型式試験の意義 新しい型式試験制度により、エイリアン・クロストーク規格に対応したケーブルのみが市場に流通することが期待されています。これにより、顧客は安心して高品質なケーブルを選択でき、安価な市販製品によるトラブルのリスクを減らすことができます。 JEITAによって提案された新たなLANケーブルの型式試験制度は、市場の透明性を高め、顧客が安心して製品を選べるようにするための重要な取り組みです。今後、規格に適合するケーブルの普及が進むことで、高速かつ安定した通信環境がさらに整備されていくことが期待されます。

最後までお読みいただきありがとうございました。完全版PDF「ブログ:安価な市販ケーブルのリスクを防ぐ新たな型式試験制度」をダウンロードいただけます。